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めまい、不眠、恐怖心…それでも“過酷な減量”は必要か レスリング・高谷惣亮の「甘えではない」戦い方

posted2021/02/05 11:00

 
めまい、不眠、恐怖心…それでも“過酷な減量”は必要か レスリング・高谷惣亮の「甘えではない」戦い方<Number Web> photograph by AFLO

昨年12月に行われた全日本選手権男子フリー92kg級決勝での高谷惣亮(上)。史上初の4階級制覇を成し遂げた

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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 体重別の階級がある競技に過酷な減量は不可欠なのだろうか?

 時に体重の10%以上を減量することも珍しくないレスリング界に風穴を開けるべく、ナチュラルな体重で世界の頂点を目指している選手がいる。男子74kg級から92kg級まで4階級をまたいで全日本選手権10連覇を達成した31歳の猛者、高谷惣亮(たかたに・そうすけ=ALSOK)がその人だ。

 ロンドン五輪とリオデジャネイロ五輪に74kg級日本代表として出場した彼は、自身三度目の大舞台となる東京五輪に86kg級で挑むべく、4月に予定されているアジア予選に向け、緊急事態宣言の制約を受けながらも日々鍛錬を繰り返している。

「普段の体重は88kg。それとほぼ同じ重さの階級に上げてから、レスリングを楽しいと思えるようになった」という高谷は、自然な体重で戦う意義をどのようにとらえているのだろうか。

 昨年12月の全日本選手権。男子92kg級に出た高谷は、初戦から隙のない動きで勝ち上がり、決勝も1分24秒であっという間にテクニカルフォール勝ちを収めた。10連覇は男子史上3人目だが、4階級制覇は史上初。74kg級と92kg級では18kgも違うのだからすごい。

「10連覇を達成できたのは好奇心を持っていたから。次のステップに行くためにどうやれば強くなるかを考えてきたことが連続優勝につながった」。そう言って胸を張った。

高2の時点で減量がきついと感じるように

 小6でレスリングをはじめ、中学校時代は全国中学生選手権の男子59kg級で優勝した。成長期に体が大きくなり、高校入学後は66キロ級からスタート。だが、175cmほどまで伸びた高2の時点で減量がきついと感じるようになった。

 苦しい思いをしながら体重を落として臨んだ高2の夏の近畿大会。高谷はスタミナ切れを起こし、個人戦ではどうにか優勝できたが、団体戦で負けてしまった。その体験が心を苦しめた。

「それまでは『減量がきつい』とはとても言える風潮じゃなかったのですが、団体戦で負けたことをきっかけに、先生に『74kg級に上げます』と言いました」

【次ページ】 パワー不足でさらに体重を82kgまで増やすと

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