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右目を失明後に“クラブW杯常連チーム”に入団! 松本光平が「ケガはむしろプラスかも」と思うワケ 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byRyo Sato

posted2021/01/21 11:00

右目を失明後に“クラブW杯常連チーム”に入団! 松本光平が「ケガはむしろプラスかも」と思うワケ<Number Web> photograph by Ryo Sato

右目を失明、左目もぼんやりとしか見えなくても、前向きにサッカーを続けている松本

競技復帰の目標は、「チーム光平」全体の目標に

 言うまでもなく、ただ走ればいいというわけではない。ステップやターンもこなしていかなければならないし、走り方が悪ければ疲労やケガにもつながってしまう。助けてくれたのが、ガンバ大阪ユース時代にお世話になった吉道公一朗コーチ(現在はFC東京のフィジカルコーチ)だった。練習後に走り方をチェックしてもらってきたという。

「本当に有難かったです。上半身をガチガチに固めないと走れなくて、だいぶクセが出ていたんですけど、そこを修正してもらいました。ターンとかも最初はこけてばっかりで、コツを教えてもらって鍛えてもらいました。どの動作もだいぶやれるようになったし、それなりに走れているんじゃないかって自分でも感じています」

 協力者の輪は自然と広がっていく。

 1日3部練習や2試合こなせるのも、その後にしっかりとケアをしてくれるトレーナーがいるからだ。競技復帰の目標は、「チーム光平」全体の目標になっていた。コロナ対策を徹底したうえで練習は毎日続いた。

「むしろプラスのほうに行っているんじゃないか」

 松本はこう感謝する。

「“こういうことをやったほうがいい。じゃああの人に聞いてみよう”みたいな感じでサポートしてくれる人が、また別の方を紹介してくれて周りに人が増えていきました。たくさんサポートしてもらっているわけですから僕が疲れたとか、大変だとかも全然ない。

 たとえば連続ジャンプを10回したら何回目で落ちてくるとかセンサーを置いて測定してくれるんですけど、今までそんな機械を使って練習をやることなんてなかった。だからもう毎日新鮮で、楽しくて。こんなこと言うと信じてもらえないかもしれないですけど、目をケガする前よりもプラスマイナスで言ったら、むしろプラスのほうに行っているんじゃないかっていうくらいの感覚なんです」

 言葉が弾む。言葉が輝く。

 満たされる日々が、「むしろプラス」という感覚を呼び寄せている。

 彼にはどうしても会いたい人がいた。

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松本光平
オークランド・シティ

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