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右目を失明後に“クラブW杯常連チーム”に入団! 松本光平が「ケガはむしろプラスかも」と思うワケ
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byRyo Sato
posted2021/01/21 11:00
右目を失明、左目もぼんやりとしか見えなくても、前向きにサッカーを続けている松本
「次のCWCに向けてしっかり準備できる」
だが1月15日に衝撃のニュースが届く。FIFAがオークランドの「出場見送り」を発表したのだ。検疫や隔離など新型コロナウイルスの感染防止措置がニュージーランド当局の要件を満たさないことから、クラブは出場を断念したという。
CWC出場を目指してきた彼は落胆しながらも、気持ちを切り替えようとしていた。
「(不参加の)連絡がきたときは“えっ!”と驚きましたけど、次のCWCに向けてしっかり準備できるというふうにポジティブに受け止めています。ただニュージーランドへの入国がとても難しい状況なので、この先どうなるかはちょっとまだ分からないですけど」
ニュージーランドは新規の就労ビザ申請を見合わせている状況だという。いつ合流できるかまったく見通しが立たないものの、「なんとかなる」精神が揺らぐことはない。
オークランドへの6年ぶりとなる復帰には松本の“猛アピール”があった。
気持ち悪くなって吐くこともしばしばだった
現地の代理人を通じて馴染みの強化スタッフに練習や試合の映像を何度も送り、自分が戦力になることを訴え続けたことが実った。CWCは今年12月に2021年大会が日本で開催される予定となっており、2月の2020年大会と合わせて今年は2回行なわれることも後押しとなったようだ。
「目のことは練習や試合を見て判断してもらって、それに一度在籍した実績も大きかったのかなとは思います。日本でCWCが開催されるので、話題性のところも当然あります。実際、戦力としてどこまで期待してくれているかは正直分からない。ただニュージーランドでずっとやってきたのでレベルは分かるし、選手もチームメイトや対戦相手を含めて大体知っています。チームに入ってさえしまえば、やれるって証明できると思うので」
競技復帰のために、彼は全精力を傾けてきた。
8月に陸上トラックのある公園近くのマンスリーマンションに引っ越して、そこで歩くことから始めた。
左目だけぼやけて見える状態のため、ふらついてこけてばかり。気持ち悪くなって吐くこともしばしばだった。それでも競技復帰を早めるなら休んでいる暇などない。