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28歳ながら「ベテランに入ってきたんで」 マリノス仲川輝人が語る、常に惜しまずスプリントするワケ
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2021/01/06 11:01
2020年12月7日、ACL決勝トーナメント1回戦、水原三星戦での仲川
“チームの範になる”思いは強い
F・マリノスの最大の持ち味は「超攻撃」ではない。それは「徹頭徹尾のハードワーク」。ポステコグルー監督が最もこだわるところだ。プレーで示そうとする仲川の姿勢に一片のブレもない。
リーグMVPを受賞してプレーヤーとしても1人の人間としてもひと回り大きくなった。“チームの範になる”思いは強い。28歳ながら「ベテランに入ってきた」と敢えて口にするのも、その責任感ゆえだ。
ベルマーレ戦、レイソル戦の2つの例だけ挙げたものの、最後まで目いっぱいやり切ろうとするのは常である。
ただケガ続きで思いどおりには働けなかった。
ケアのルーティンを崩して臨機応変に対応しようとした
2019年シーズンと違って仲川を苦しめたのは、コロナ禍におけるコンディション調整。スプリンタータイプゆえの難しさがそこにはあった。
「キャンプでトレーニングを重ねて2月にシーズンが始まってから、体が出来上がりつつあるときに中断になってしまいました。筋肉系はデリケートにやっていかなきゃいけないんですけど、キャンプから積み上げたものを一度ゼロに戻すとなるとまたつくり直していかないといけない。時間も掛かるし、(コロナ禍の)難しさに直面したところはあります」
トレーニングが再開となっても、感染対策のためにケアにも制限が掛かる。昨年は週1で行っていた温泉ケアも取りやめにせざるを得ず、しばらくは練習後の交代浴もできなかった。ルーティンが多いことで知られる彼だが、ケアのルーティンを崩して臨機応変に対応しようとした。7月からJ1が再開すると、ACL出場組はハイペースでJ1の日程をこなしていかなければならない。筋肉をつくり上げ、試合をこなし、制限下でケアをする。それは困難を極めた。
7月22日のホーム、横浜FC戦で右足を負傷。右ハムストリング肉離れで全治4~6週間と診断された。だがここでも彼は「チームにどう貢献できるか」を考えている。