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28歳ながら「ベテランに入ってきたんで」 マリノス仲川輝人が語る、常に惜しまずスプリントするワケ
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2021/01/06 11:01
2020年12月7日、ACL決勝トーナメント1回戦、水原三星戦での仲川
細かいプレーにこそ伝わってくるものがある
J1では上位に浮上することなく、中位の9位止まり。ACLの日程調整のために超のうえに超がつく過密日程を強いられたことも無関係ではなかっただろうが、どのタイトルにも手が届かなかった。
仲川もケガが相次ぎ、リーグ戦では18試合2得点にとどまった。MVPに選ばれた2019年シーズンの成績と比べると数字的には物足りない。ただ、彼が期待を裏切ったのかと言われれば、NOと断じたい。
チームの一員としてやるべきことをやってきたかどうかを指標にするのであれば、評価は違ってくる。ACLでの起用法を見ても、アンジェ・ポステコグルー監督の信頼が揺らぐことはなかった。
彼の働きが、どれほどチームを助けてきたか、どれほど鼓舞してきたか。
ゴールやアシストがなくとも、細かいプレーにこそ伝わってくるものがある。
守備のスイッチを自ら率先して入れていく
あれは、J1再開2戦目、初勝利を挙げたホーム、湘南ベルマーレ戦(7月8日)だった。仲川は対面の鈴木冬一とバチバチの肉弾戦を展開しながらも、攻略するまでになかなか至らなかった。後半に入るとベルマーレに先制されてしまう。
自分の持ち味を出せないとなると、イライラしてプレーに影響するというパターンは一般的に少なくない。だが仲川が我を見失うことはなかった。持ち味を発揮すべくトライを続けつつ、違うプレーでの貢献に意識を向ける。
オナイウ阿道のゴールで終盤に勝ち越すと、仲川は守備のスイッチを自ら率先して入れていく。対応も抜かりない。ペナルティエリア内に石原広教が1対1で仕掛けてくると、先に体を入れてボールを外に出させている。いくらスプリントを繰り返そうとも、最後のホイッスルが鳴るまで手を抜くことはなかった。