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28歳ながら「ベテランに入ってきたんで」 マリノス仲川輝人が語る、常に惜しまずスプリントするワケ
posted2021/01/06 11:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Getty Images
あれから時間が経っても、くすぶりが消えていない。
仲川輝人は、深いため息を吐く。
「引きずっているわけではないですよ。でもどうして負けちゃったんだろうとは今も思っていて、非常にもったいないというか、不完全燃焼というか。あの水原戦は前半いい流れで点が取れて、チャンスもありました。それが後半になって(相手のほうが)戦い方としてうまかったかなというのもあるし、賢さや(ACLの戦いにおける)慣れみたいなものも感じました。ウチの失点が軽いところもあって、あれあれっていう間にやられてしまった。(2020年シーズンの)チームを象徴する試合になってしまったなって」
ACLのノックアウトステージ。2019年のJ王者・横浜F・マリノスはグループステージを首位で通過して2020年12月7日、水原三星と決勝トーナメント1回戦を戦った。前半から優位に試合を進めて仲川は先制点をアシストしながらも後半に勝ち越され、アジア制覇の野望はあっさりと潰えてしまう。強度を持続して最後まで攻め倒すというチームの持ち味を発揮できなかったショックは大きかった。
「勝負に対する差が出ちゃったのかな」
仲川の言葉は、チーム目線に立つ。「失点が軽い」という発言も己に向けている。その目線に立つからこそ考えなければならないことも多く、消化に時間が掛かっているように思えてならない。
「勝負に対する差が出ちゃったのかなとは感じますね。自分たちのこれからの課題にもなりました。チームとして成長できる部分としてポジティブに捉えてはいます」
2020年シーズンのトピックの1つとして軽く触れたつもりではあったが、ここまで重く受け止めるのも彼らしいなと妙に納得もできた。
結果から見ればチームにとっても仲川にとっても不本意なシーズンであった。