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「慶応に考えさせた」早稲田か、「9連覇“最後の世代”」帝京か…大学ラグビー“新旧”王者の本命は?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2021/01/01 17:02
大学ラグビー準々決勝・早慶戦。後半、突進する早大の村田陣悟
早稲田と慶応の差は「個人能力」
さて、準々決勝から2週間。早稲田の上積みを期待したい部分は、BKの「仕込み」だ。慶応戦ではWTB槇瑛人が2トライの活躍を見せたが、これは槇のスピードによるところが大きかった。準々決勝での早稲田と慶応の差は、槇のスピードに象徴されるように、個人の能力の違いだった。
また、売り出し中の1年生CTB、伊藤大祐の独走トライも、慶応がアタックに転じたところをFLの相良昌彦がボールをはたく好プレーを見せた後、転々としたボールを伊藤が拾い、そのままスピードを生かして走り切ったものだった。つまりは個人技に拠るところが大きかったわけで、組織的に崩したとまでは言いきれない。
ただし、自陣深いところから攻撃を開始するなど、アタックは積極モードへと変化を見せている。2週間という時間が早稲田のアタックをどれだけ変身させているか注目したい。
昨年度と同じ成長曲線をたどるとするなら、間違いなく、刀の切れ味は増していることだろう。
「ギリギリで9連覇を知る4年生」
対する帝京の今季の戦い方の評価は難しい。
ギリギリで優勝を知る世代が4年生を迎え、なんとか勝利の遺伝子を次世代へとつなぎたいところだが、今季の帝京は11月に入ってから早稲田に敗れ、明治に逆転負けを喫し、12月には慶応に後半のアディショナルタイムにゴールを割られ、逆転トライを許した。
負け癖がついたんじゃないか?
そう思ってしまうほど、帝京のしたたかさが消えかかっていた。しかし、準々決勝の東海大戦でのプレーぶりには、ポテンシャルの高さが垣間見えた。
最終スコアは14対8。近ごろのラグビーでは珍しいロースコアだ。ただし、留学生を複数抱える両軍の戦いは、ヘビー級の戦いという趣で、見ごたえがあった。
とにかく、前半に見せた帝京スクラムの破壊力は凄まじかった。東海大のスクラムも重いし、強い。しかし前半34分にはスクラムでの電車道を連発し、ペナルティトライを奪った。