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「イングランドは嫌われていますし」エディー・ジョーンズが語る2023年W杯 日本への期待と警戒
posted2020/12/30 17:01
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Takuya Sugiyama
次回のラグビー・ワールドカップが行われるのは2023年。気がつけば、もうすぐにやってきそうだ。
舞台はフランス。その組分け抽選が去る12月14日に行われたが、イングランド代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏は、プール分けをクリスマス休暇で帰国した日本で聞いた。
「ロンドンからの飛行機で日本に戻ってきて、入国にあたっての検疫はいつもより時間がかかりましたね。すでに帰国していた妻と合流すると、『なにか、日本と同じグループになりそうな気がするわ』と妻が言っていたんです。私にも、そんな予感が働いたんですよ。そうしたら、本当に日本と同じプールDになった。報せを聞いた朝、ステイしているところから、富士山が美しい姿でくっきりと見えました。なにか、暗示的で、感慨深いものがありました」
「日本はスピーディでスキルフル」
予選プールDは、次のようになった。
イングランド
日本
アルゼンチン
オセアニア1
アメリカ2
イングランドを指揮するエディーさんにとって、このプールはどのように映っているだろうか。
「われわれは、ノックアウトステージに入る前に、レベルが高く、ラグビースタイルのまったく異なる国と戦うことになりました。アルゼンチンはフィジカルが強く、セットプレーに自信を持っています。反対に日本はスピーディでスキルフルなラグビーを展開する。対策には念には念を入れなければいけないでしょうね」
アルゼンチンの弱点とは?
この秋のテストマッチで、話題をさらったのはアルゼンチンだった。W杯では予選プール敗退したが、2020年11月14日、史上初めてオールブラックスに勝ち、それは国民的な慶事となった。
「戦前の予想では、ここしばらく国際試合を戦っていないアルゼンチンに対しては懐疑的な目が向けられていましたが、すべての時、運がアルゼンチンに味方しました。まず、彼らはこの一戦に向けて、フィットネス、ストレングスともにいい状態に仕上がっていた。対するオールブラックスはオーストラリアとのテストマッチが続き、メンタル面で消耗していた様子がうかがえました。それを差し引いても、アルゼンチンFWの強さは特筆すべきものがありましたね」
オールブラックスとの再戦は敗れたものの、オーストラリアとは2引き分け。プール戦敗退に終わってしまったW杯から1年が経ち、本来の力を取り戻したように見える。
ただし、エディーさんは冷静な視点でアルゼンチンを見ている。
「アルゼンチンはここ一番に力を発揮するタイプの国で、感情的なものが彼らのパフォーマンスを大きく左右します。安定しているとは言い難いのが彼らの弱点でしょう。2021年、2022年と彼らがどのようなチーム作りをしていくのか、じっくりと観察させてもらうことにします」