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「セがパに勝つためには“リリーフ重視”では絶対無理…」引退した藤川球児の解説がネットで絶賛された理由

posted2020/12/16 17:01

 
「セがパに勝つためには“リリーフ重視”では絶対無理…」引退した藤川球児の解説がネットで絶賛された理由<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

今年現役引退した藤川球児。日米通算で811試合、61勝39敗245セーブ

text by

金子達仁

金子達仁Tatsuhito Kaneko

PROFILE

photograph by

BUNGEISHUNJU

 どこの誰が、いつごろ当てはめた言葉だったのか。

 キャッチャー=女房役。

 大正なのか、昭和なのか、いずれにせよ、「女房」という言葉が、令和の世よりもずっと、従属的な意味合いを持っていた時代に定着したことだけは間違いない。一昔、いや、二昔前、キャッチャーは確かに女房だった。ピッチャーを陰で支え、そっと寄り添う存在だった。

 だが、野村克也のID野球が脚光を浴び、古田敦也がその申し子として活躍するようになったあたりから、キャッチャーこそがダイヤモンドの主である、との見方も広まった。

「あなたについていきます」から「俺についてこい」──。

「藤川投手、ごめんなさい」

 藤川球児も、かつては明らかにキャッチャーの尻に敷かれるタイプのピッチャーだった。矢野燿大が出すサインは絶対。だから、大量リードの場面で変化球のサインを出されても何の疑いもなく従い、結果的に清原和博から罵倒された。

「藤川投手は何も悪くありません。サインを出したのは矢野監督です。藤川投手、ごめんなさい」

 11月10日の引退セレモニー。甲子園は清原からのビデオメッセージにドッと沸いた。15年前、東京ドームで藤川のフォークに空を切らされた直後はピッチャーに怒りを叩きつけた男の野球観──野茂英雄と真っ向からの名勝負を演じ、ゆえにピッチャーこそがバッターにとって最大の主敵と考えていたであろう男の野球観も、時間の経過とともに変わっていた。

「放送では言えなかったですけど……」

 だが、藤川球児もまた、違った一面を持つようになっていた。そのことを全国に知らしめたのが、日本シリーズ第2戦での解説だった。その配球論や局面ごとの心理分析は、批判ばかりが目立ちがちなネット上でも絶賛された。

 考えることをキャッチャーに任せっぱなしにしていたピッチャーでは、断じてできない解説だった。

 結果的にソフトバンクの4連勝で終わった日本シリーズだが、第2戦の解説をしながら、藤川はこれがただの2勝0敗、0勝2敗ではないことを感じていたという。

「巨人からすると、打たれてはいけない選手全員に打たれてしまった。放送では言えなかったですけど、正直、あ、これは無理だなと。5番の栗原君。9番の甲斐君。ピッチャーからすると、ここは休めるとこなんですよ。打たれても大きいのがないという意味で。ところが、そこで打たれて、休めるところがなくなってしまった。第一戦の菅野君は柳田君を抑えた。でも、休めるはずだった栗原君に打たれて、第二戦では栗原君もケアしなきゃいけなくなった。そうしたら柳田君にも打たれた」 

 巨人打線の沈黙も、予想通りだったという。

【次ページ】 「野球について考える頭脳が手つかずのまま…」

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