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「よくもオレをクビに…」プロ野球トライアウト 由規、宮國…私がボールを受けた“6人”、戦力外通告の「その後」
posted2020/12/16 17:25
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
BUNGEISHUNJU
“流しのブルペンキャッチャー”として全国各地、数多くのアマチュア選手を取材してきた筆者。「プロ野球トライアウト2020」では過去に自らボールを受けた“6人”がマウンドに立った。戦力外通告を受けたそれぞれのピッチャーが“プロ入り前”に語っていたこととは――。
この日8人目の投手として、元楽天・佐藤由規がシートバッティングのマウンドに上がった時、私の思いは、いっぺんに13年前の仙台育英高校のブルペンに飛んでいた。
神宮球場で行われた今年の「12球団合同トライアウト」。
エントリーした33人の投手の中に、アマチュア時代、ブルペンでその全力投球を受けた投手たちが6人……来季以降の「プロ野球生活」を賭けて、渾身のピッチングを披露した。
【1】由規(元楽天)が「高校No.1右腕」だったころ
13年前の仙台育英時代、由規は、すでに「高校No.1右腕」と言われていた。甲子園で150キロ台を連発して、それでも智弁学園に打ち崩されて敗れた試合。1球投げてはスコアボードを振り返り、スピードを確かめていた。
スピードガンと勝負しちゃ、打者と勝負にはならない。“数字”の裏付けが欲しかったのか……あんなにすごいボールを投げられるのに、どこか自分自身を信用していないような所がじれったかった。
「身体能力も野球の上手さも、弟のほうがぜんぜん上なんで……自分なんかまだまだダメです」
3年後にプロ入りすることになる弟・貴規(元ヤクルト)を持ち上げる発言をしながらも、グラウンドに出れば、左投げでも70mぐらい涼しい顔で投げて、見ているこっちを驚かせてくれた。
「161キロ」よりも「140キロ後半」が速い?
こんなこともあった。
私が由規のピッチングを受けるブルペンで、当時の佐々木順一朗監督が、スピードガンで測ってくださった。
高校No.1の快速球投手。それは速い。加えて、仙台育英のブルペンは、夕方になるとちょうど投手の真後ろから西日が射してくるから、まぶしい。