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「セがパに勝つためには“リリーフ重視”では絶対無理…」引退した藤川球児の解説がネットで絶賛された理由
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2020/12/16 17:01
今年現役引退した藤川球児。日米通算で811試合、61勝39敗245セーブ
「もともと、巨人って速球派のピッチャーにあんまり強くない。ウチの高橋遥人なんかにも手を焼いてましたからね。で、第一戦で岡本君が一打席目で千賀君のストレートにバットを折られた。あの試合、ジャイアンツはフォークを捨ててストレートに的を絞ってたはずなんですが、そのストレートを速いぞ、と感じさせられた。ぼくからすると、あの日の千賀君のストレートっていま一つな感じだっただけに、この印象づけは大きかったですね」
「野球について考える頭脳が手つかずのまま…」
なぜ藤川球児は変わったのか。なぜ考えることをキャッチャーに丸投げするわけではないピッチャーになったのか。
本人に言わせれば、大きかったのはヒジの手術だという。
「球速自体は、わかってても打てないって言われてたころに比べて、むしろ4キロか5キロ、速くなってると思うんです。でも、あのころの真っ直ぐじゃないことは自分でもわかってるし、あのころと同じことをやってたら抑えられない。そしたらどうするか。考えるしかない。いままで使ってなかった引き出しを使っていくしかない」
彼にとって幸運だったのは、誰も到達できないような高みとされた投球が、藤川球児というピッチャーのすべてを出し尽くしたがためのものではなかった、ということだった。
「技術であったり、若いころから培ってきた野球について考える頭脳とか、そのあたりが手つかずのまま残ってた感じですかね。肩甲骨や股関節の可動域とか、年齢を重ねることによって失われたものもありましたけど、それを補うものは残ってた。引き出し開けんといてよかったなあって感じです」
セがパに勝つためには“先発至上主義”
幸か不幸か、肘にメスを入れた藤川が再び阪神のユニフォームを着たとき、「人生で一番尊敬している」と慕った矢野燿大は引退していた。城島健司もチームを去っていた。安心してすべてを委ねることのできる女房役の姿はなく、かつ、自分のストレートは以前とは少し違ってしまっていた。
だが、考えようによってはマイナスでしかないすべての状況を、藤川球児はプラスに変えた。球界でも屈指の、考えるピッチャーになった。
これからのプロ野球についても、彼は考えを持っている。
「メジャーリーグも完全にそうなってますし、特にセ・リーグの場合、パのチームに勝とうと思ったら先発至上主義にならざるをえないでしょうね。もう絶対無理です、リリーフに比重をおいても」
その理由を聞くと、彼は「ごめんなさい、話すと4時間以上かかるんで」と笑った。
それでも聞きたい、と思われた方は、ぜひ編集部あてにメッセージを。藤川球児4時間以上トークショー、実現するかもしれません。