第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
勝利を知る指揮官が山梨学院大学を復活へ導く。法政大学は数字に現れない強さを秘めている。
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箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021
photograph byAsami Enomoto/Yuki Suenaga
posted2020/12/16 11:01
飛躍の1年となった山梨学大の主将・森山(左)。鎌田は前回も2区を走った法大のエースだ。
予選会のエースの走りに見えた成長
今回の法大、エースの鎌田航生(3年)が箱根駅伝予選会ではチームトップの個人15位。序盤は慎重に入り、レース展開を見ながら後半にペースを上げていく戦略で走った。
鎌田は「最初から積極的にいけば、もっと上の順位も狙えたと思いますが、予選会は通過することが第一。確実にタイムを稼げる走りをしました」と、結果を拾うレースに徹したと振り返る。
言葉からは日本人トップ争いに加わりたかったという思いも滲むが、この箱根駅伝予選会のようにレースの流れを見ながら、状況に応じた走りができるようになった点が今季の成長だ。前回も2区を担っているだけに、今大会もエース区間で起用される可能性が高い。
鎌田に次ぐ準エースとして名前が挙がるのが清家陸(3年)。箱根駅伝予選会でも鎌田に次いでチーム2番手となる個人33位と、高いレベルで安定して走れる点が強みだ。入学以来、5区を希望しており、山のエースだった青木の控えとして準備を進めてきた。いよいよ夢見た舞台で本領発揮を狙っている。
また、河田太一平(2年)も同じく鎌田を支える存在。1年生だった昨季、出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝と学生三大駅伝すべてを主要区間で経験した。特に箱根駅伝ではたすきをもらう位置が最下位と苦しい局面だったが、4区区間8位で順位を上げてみせた。流れを引き戻す強さを備えている。
坪田監督が期待する最上級生たちの役目
箱根駅伝経験者だけでなく、新戦力も台頭してきた。今季、急成長を遂げたのが松本康汰(2年)。箱根駅伝予選会でもチーム3番手と好走し、エース候補に名乗りを挙げた。また川上有生(2年)も11月の厳しい練習期間の最中に記録会10000mに出場。後半をひとりで押し切り、坪田監督を喜ばせている。箱根駅伝予選会もチーム4番手とハーフマラソンへの対応力も高い。彼らが軸となる布陣だ。
箱根駅伝予選会にはひとりしかエントリーしなかった4年生も練習の消化状態が良く、5人がエントリーされた。
「これまで力を発揮できなかった学年ですが、彼らがチームを引っ張り、まとめる役目を果たして欲しい」と指揮官。2、3年生が中心のチームだが、最上級生が脇を固める形を目指す。全体的に堅実かつ強さを備えた選手が揃っている印象だ。
エントリー上位10名の10000m平均タイムは出場20校中19位。だがここまで示した通り、坪田監督は記録にこだわらないチーム作りをしているだけに、この数字は戦力的な立ち位置を表していない。目指すは8位。タイムでは顕在化していない強さを、高速化が進む箱根駅伝で発揮できるか、注目だ。