第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
勝利を知る指揮官が山梨学院大学を復活へ導く。法政大学は数字に現れない強さを秘めている。
posted2020/12/16 11:01
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箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021
photograph by
Asami Enomoto/Yuki Suenaga
山梨学院大学
第97回箱根駅伝予選会:7位
第96回箱根駅伝(前回大会):不出場
2年ぶり、34回目
あえて優勝したときのチームの雰囲気を話す。
文=小堀隆司
1年で必ず本大会返り咲きを果たし、箱根駅伝ではシード権の獲得を目指す――。
強い決意で臨んだ今季、飯島理彰監督は2つの命題をチームに課した。
まずは日本人エースを作ること。次にスタミナの強化。前回、箱根駅伝予選会で17位と惨敗を喫した理由が、まさにそこにあったからだ。
「昨季を振り返ると、うちに対して厳しい報道が多かったですよね。山梨学院大学は予選会を通過できないんじゃないかとか、エースがいないと言われて、選手の気持ちが揺らいでしまった。大会の直前まで取材を許してしまった私の管理不足もあるんですけど、それを否定できない甘さがあったのもまた事実です」
飯島監督が就任したのは2019年2月のこと。わずか半年で、下降線をたどっていたチームを立て直すのは容易ではなかっただろう。
だが、33年連続で箱根駅伝を走っていたプルシアンブルーのたすきが途絶えたことで、強い危機感をチーム全体で共有できた。それが暗闇を照らす一筋の光になった、と飯島監督は話す。
「後半タイムが落ちたのは明らかにスタミナが足りなかったからだし、それを補うには当然、後半粘れるスタミナをつけなければならない。昨季より練習量を増やしても学生は不満ひとつ言いませんし、意図を理解しているから今季は練習がしやすかった。主将の森山真伍(4年)が立派なエースに成長してくれて、それもチームにとっての安心感につながりました」
留学生2人だけでなく、全体の底上げ進む
名前が挙がった森山は今季、5000mで13分46秒76、10000mで28分28秒30と自己ベストを更新し、「強豪校のエースたちと互角以上に戦える」と自信を深めた。さらに2年生になったケニア人留学生のボニフェス・ムルア(2年)も10000mで28分08秒10をマークするなど急成長。このダブルエースの存在は他校にとって脅威となるに違いない。
8月上旬にムルアが膝を痛め、いまだ本調子に至っていないのは気がかりだが、もうひとりのケニア人留学生ポール・オニエゴ(3年)も予選会でチームトップをとる実力者。仮にどちらが起用されても、エース級の働きを期待できるだろう。
エースの台頭と歩を合わせるように、今季はチーム全体の底上げも進んだ。予選会で森山の順位を3人の日本人選手が上回ったことを飯島監督は高く評価する。
「松倉唯斗(3年)、瀬戸祐希(4年)、橘田大河(2年)の3人が上回ったんですが、当日の気象条件や状況を考慮して彼らは自らペースを上げた。私の想定したタイムだと予選会を通過できていなかったですから、ほんと好判断だったと思います」