第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER

復権を期す名門、順天堂大学と中央大学。スーパールーキーの“花の2区”抜擢はあるか。

posted2020/12/09 11:01

 
復権を期す名門、順天堂大学と中央大学。スーパールーキーの“花の2区”抜擢はあるか。<Number Web> photograph by JMPA

箱根駅伝予選会で順大・三浦は日本人トップ通過の快走(左)。吉居も中大の2位通過に大きく貢献した。

text by

箱根駅伝2021取材チーム

箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021

PROFILE

photograph by

JMPA

今回で97回目を数える東京箱根間往復大学駅伝競走。新型コロナウイルス感染拡大の影響により異例のシーズンとなったが、2021年1月の箱根路では21チームが1年間の鍛錬の成果を競う。大混戦が予想されるなか、各チームの監督の戦略を紐解く。

順天堂大学

第97回箱根駅伝予選会:1位
第96回箱根駅伝(前回大会):総合14位
10年連続、62回目

Head Coach of the TEAM:長門俊介

“あいつが出せるんだったら……”異例の好記録ラッシュに沸く。

文=和田悟志

 今季の箱根駅伝は、予選会からの出場ながら、本大会で上位争いを掻き回しそうなのが、62回目の出場となる順天堂大学だ。10月の箱根駅伝予選会は、好条件にも恵まれ超高速レースになったが、2位の中大に2分39秒もの差をつけてトップ通過を果たし、圧倒的な強さを示した。

 その2週間後の全日本大学駅伝では、2区の伊豫田達弥(2年)がレース中に足を捻るなどのアクシデントもあり、箱根駅伝予選会ほどのインパクトは残せなかったが、それでも8位に食い込み14年ぶりにシード権を獲得した。

「もうちょっと戦わせてもらえるかと思ったんですけど、まだまだ甘くはないですね……。今季は(箱根駅伝の)シード校との実力差がなかなか見えていませんでしたが、自分たちの立ち位置がある程度分かりました。箱根駅伝に向けては課題も見えました」

 全日本大学駅伝後にそう話す長門俊介駅伝監督の口ぶりには、それほど悲嘆の色はないように感じた。むしろ箱根駅伝に向けてもう一段ギアを上げようと、決意を固めたように思えた。

 総合優勝11回の名門を率いるのが、この36歳の若き指揮官、長門俊介だ。今回出場する20大学では、拓大の山下拓郎監督、専大の長谷川淳監督と共に最年少監督のひとりだ。

 長門は2011年に母校でもある順大のコーチに就任すると、2016年に31歳の若さで監督に昇格した。そして、若い指導者ならではの発想でチームの強化にあたってきた。

“バネトレ”と方針の撤廃

 例えば、就任1年目からチームが取り組んでいる“バネトレ”というフィジカルトレーニングがある。これは、フィギュアスケートに着想を得て、実際にフィギュアスケートの選手のトレーナーを務めていた池上信三トレーナーと共に作り上げてきたトレーニングだ。

 また、以前の順大は、好記録を出すための条件が整えられた記録会にはあまり出場しないという方針があったため、他校に好記録ラッシュが起きている時期でも、順大の戦力は秘密のベールに包まれていた。ところが、昨今は、かつての方針は取り払われ、記録会にも出場するようになった。

 実際に今季も、箱根駅伝予選会の1週間後に行われた順大競技会では、予選会不出場だった選手に好記録が相次いだ。2020年3月の順大競技会でも好記録で走った者が多く、学生トップランナーの目安とされる10000m28分台の記録をもつ選手は、現時点で12人にも及ぶ。

「まあ、良くも悪くも似通った力の選手が多いんですけどね……。誰かが記録を出せば“あいつが出せるんだったら……”っていう雰囲気がチーム内にはあります。良い感じで相乗効果が生まれているのかなと思っています」(長門監督)

 もちろんタイムはひとつの指標に過ぎないが、好記録ラッシュは選手にとって自信につながっている。そして、指揮官もまた好感触を得ている様子だ。

 今季、ロードでもトラックでもこれほど好記録が続出しているのは、高速化する駅伝に対しての意識改革があったからだ。

【次ページ】 全てのタイム設定を見直す

1 2 3 4 NEXT

ページトップ