第97回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
勝利を知る指揮官が山梨学院大学を復活へ導く。法政大学は数字に現れない強さを秘めている。
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箱根駅伝2021取材チームhakone ekiden 2021
photograph byAsami Enomoto/Yuki Suenaga
posted2020/12/16 11:01
飛躍の1年となった山梨学大の主将・森山(左)。鎌田は前回も2区を走った法大のエースだ。
森山の前向きな姿勢が全体に浸透
今季はコロナ禍もあり、練習が計画通り進まない時期も多かったというが、それも学生たちが好材料に変えてくれた。森山が率先してひとり黙々と走り込む姿を見て、それを見習う下級生たちが多かったという。
「特に1年生には良い手本になりましたよね。大学は自ら進んで強くならなければいけないと、彼らは理解したと思います」
前向きな姿勢はチーム全体に浸透し、キツイ練習から逃げる選手も少なくなった。例年通り、夏は長野の車山高原で合宿を張り、一体感を強めた。飯島監督は選手の成長をしっかりと感じ取っている。
「やはり疲れているとき、足にハリがあるときにもう一踏ん張りできるかどうかでスタミナがついてくる。今の選手はそれを言い訳にしませんね。夏合宿では幸か不幸か、コロナの影響ですべての団体客がキャンセルとなった。宿舎がうちの貸し切り状態となったことで、例年にないくらい落ち着いた環境で良い走り込みができました。その成果が秋以降になって徐々に現れてきていると思います」
箱根を意識させるための工夫
合宿中は予選会のことだけでなく、選手に箱根駅伝を意識させるための工夫も欠かさなかった。宿舎のある白樺湖から車山高原へ向かう3kmの上り坂を2区の最終盤に見立て、「最後疲れているときにここでスピードを維持しなきゃいけないんだぞ」とエース格の選手に発破をかけた。
学生時代に山梨学大で2度の箱根駅伝優勝を経験している飯島監督は、強者のメンタリティを伝えることにも余念がない。
「自分の過去の話をするのはダメだという指導者もいるけど、優勝したときのチームの雰囲気を話すことで、学生たちが気づくこともあるんですね。決して自慢話をしたいわけじゃないですよ(笑)。学生たちが聞いてきたら、なるべく丁寧に話すようにしています」
大いなる復活の足がかりとして、2016年以来遠ざかる、箱根駅伝のシード権獲得を目標に掲げる。這い上がろうとしているチームの強さをぜひ見てほしい、と飯島監督は話す言葉に力を込めた。