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新渡戸稲造を読む親日家、NBA選手の息子は八村塁の元同僚 パナソニック新監督ティリさんってどんな人?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2020/12/03 11:01
日本バレー史上初となるフランス代表と兼務する形でパナソニック監督に就任したロラン・ティリ。外国人監督就任は創部以来初めてのことだ
ティリ監督が求める3つのこと
選手に求めたテーマは、「毎日の練習を100%で行う」「言い訳をしない」「自分に制限をかけない」の3つ。それはパナソニックでも選手たちに伝えている。
ティリ監督は選手の操縦術に長けている。例えば、フランス代表のアウトサイド、イアルバン・ヌガペトは、身体能力や独創性のあるプレーが武器で、石川祐希(ミラノ)が大学1年の冬にイタリア・セリエAのモデナに所属した際、大きな影響を受けた選手だ。
ただ私生活は奔放な面もあり、扱いの難しい選手と評価され代表から外されたこともあった。しかしティリ監督は彼をうまくやる気にさせ、ヌガペトはチームのエンジンとなった。同時に、コート外ではラッパーとして音楽活動をするなど、多才ぶりを発揮している。
「私は、『コートの外でこういう人間だから、コートに立たせない』という環境は作りたくない。コートの中の姿で判断し、コートの外ではある程度自由にさせています。さすがにお酒を飲みすぎたり、タバコを吸ったり、夜更かししたり、そういうことはダメなのでコントロールしますが」
選手と監督の関係は“家族”
ティリ監督は選手と監督の関係を“家族”に例える。
「私は選手にとって“監督”や“先生”であることは望みません。“家族”のようでいたいと思っています」
実際の子育てでも、のびのびと個性を発揮させる方針だったようだ。ティリ監督には3人の息子がいて、長男のキムはバスケットボールのフランス代表としてリオ五輪に出場した。今季はBリーグの琉球ゴールデンキングスでプレーしている。
次男のケバンは、バレーボールで代表入りし、父のもとでリオ五輪に出場した。つまりリオ五輪には3人揃って出場していたのだ。そして三男・キリアンはバスケットを選び、アメリカのゴンザガ大で八村塁とともにプレーし、NBAのメンフィスと契約した。日本との縁を感じるとともに、なんとスポーツに愛された家族なのだろうかと感心してしまう。
しかし決して英才教育を施したわけではなかった。プロや代表選手になってほしいとは微塵も考えておらず、子供たちに求めていたのは「毎回ベストを尽くす」「リスペクトする」「楽しむ」の3つだけだったという。3人ともバスケットとバレーの両方をやって、好きなほうを自分で選んだ。