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新渡戸稲造を読む親日家、NBA選手の息子は八村塁の元同僚 パナソニック新監督ティリさんってどんな人? 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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posted2020/12/03 11:01

新渡戸稲造を読む親日家、NBA選手の息子は八村塁の元同僚 パナソニック新監督ティリさんってどんな人?<Number Web> photograph by Noriko Yonemushi

日本バレー史上初となるフランス代表と兼務する形でパナソニック監督に就任したロラン・ティリ。外国人監督就任は創部以来初めてのことだ

契約は4年「育てながら勝つ」

 今回、南部GMのオファーに対して、ティリ監督は、「こんな大きな、自分にとってやりがいのある仕事のチャンスをくれてありがとう」と言って快諾した。

 契約期間は4年間。そこには、若手育成と世代交代という課題解決への期待が含まれている。短い契約期間の場合、特に結果を問われるプロの指導者は、計算できる固定メンバーで戦い、その間の育成が滞ってしまいがちだからだ。

 パナソニックは昨季まで何年もの間、福澤達哉(パリ・バレーにレンタル移籍)のポジションに久原翼が入ったり、清水邦広が怪我で離脱していた間に大竹壱青がオポジットを務めた以外、レギュラーメンバーがほとんど変わっていなかった。それはレギュラー陣が30代を迎えても向上心と闘争心を持って維持、成長し続けてきたからだが、若手の突き上げが足りなかった面もあった。

「若手育成はパンサーズの大きな課題。これをティリさんにテコ入れしてもらいたいというのがまず1つあります。もちろん勝負は勝たなければいけないんですが」と南部GM。

 育てながら勝つ。「それはすごく難しいこと」と苦笑しながらも、ティリ監督はその難題に挑もうとしている。

低迷するフランスを五輪に導く

 ティリ監督は現役時代、1988年ソウル五輪、1992年バルセロナ五輪に出場。引退後に指導者となり、2012年からフランス代表監督を務めている。

 フランス代表は2004年アテネ五輪を最後に五輪から遠ざかり、世界ランキングも21位と低迷していたが、ティリ監督が就任後、着々と力を伸ばし、2015年にはワールドリーグやヨーロッパ選手権で優勝し、世界トップレベルの仲間入りを果たした。2016年にはリオデジャネイロ五輪世界最終予選を勝ち抜き、3大会ぶりの五輪出場に導いた。世界ランキングは6位に浮上し、今年1月にはヨーロッパ大陸予選で優勝して東京五輪の出場権も獲得。強豪ひしめくヨーロッパで2大会連続の五輪切符を勝ち取った。

 代表監督に就任後、最初の2年間は、代表の環境と選手の意識を変えることに費やした。「当時は代表選手たちにモチベーションを感じなかった」と振り返る。その要因を解消するため、それまで過去の実績によって差があった代表選手の日当を、全員同じ55ユーロに統一。年齢や実績に関係なく、「昨日メダルを獲ったとしても、それは過去のこと。毎日、自分がなぜここ(代表)にいるのかということを証明しなければならない」と選手に言い聞かせた。

 また、それまでなかったBチームを発足させ、意欲のある人材を集めて合宿を行い、そこから引き上げていった。

【次ページ】 ティリ監督が求める3つのこと

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