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新渡戸稲造を読む親日家、NBA選手の息子は八村塁の元同僚 パナソニック新監督ティリさんってどんな人?
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2020/12/03 11:01
日本バレー史上初となるフランス代表と兼務する形でパナソニック監督に就任したロラン・ティリ。外国人監督就任は創部以来初めてのことだ
東京五輪後はパナソニックに専念
ティリ監督は、来年に延期された東京五輪までは兼任でフランス代表監督も続けるが、東京五輪後に退任し、パナソニックの監督に専念する。
実は東京五輪後も2024年パリ五輪まで代表の指揮を執る予定だったが、パナソニックからのオファーを受けて、パナソニックを選んだ。
自国開催の五輪で、自国の代表の監督を務める。指導者にとって最高のシチュエーションのように思えるが、ティリ監督にとっては、そうではなかったようだ。
オリンピックは出場権を勝ち取って行くもの、という考えがあり、熾烈な予選を勝ち抜いてリオ、東京の出場権をつかみ取ったチームに誇りを持っている。だから出場が約束されているパリ五輪には、それ以上の大きな魅力は見出せなかったようだ。
「この(パナソニックからの)オファーがなかったらパリまでやる可能性が高かったと思いますが、二度オリンピックの出場権を獲った後で、パリに行くことよりも、ここ(日本)に来ることのほうが、私にとって特別で、非常に重要なチャレンジだと思ったので、こちらを選びました」
パリ五輪まで代表とパナソニックの監督を兼務することもできたが、あえてそうせず、全精力をパナソニックに注ぐ。その魅力をこう語る。
「私はチャレンジが大好きなんです。新しい文化や生活など、新しいものに触れることに本当に惹かれる。それに、バレーボールにおいて、日本は速い攻撃や守備など、とても重要な影響を及ぼしてきた歴史がある。だからここに来ることは私にとって非常にエキサイティングなチャレンジでした。私がこれまでヨーロッパや国際舞台で築いてきたものを選手の皆さんに伝えるとともに、私自身も学んで進化したい。これまでの経験と、ここで得たものをうまくミックスしていきたい」
「Vリーグのレベルはとても高い」
Vリーグの印象については、こう話した。
「海外の人はVリーグに対する評価が低いと思うけれど、その考えは変えなければいけない。Vリーグのレベルはとても高いと感じます。技術力が高く、特にサーブやディフェンスがいい。数字で比べると、ヨーロッパでは、5セット行った試合では1チームのスパイクの打数が110〜115本くらいですが、日本では150〜160本に及ぶ。それだけディフェンスがよく、ミスが少ない。
こういうリーグは初めてなので考えや戦術を変えなければいけませんが、それもチャレンジなので面白い。それに各チームの力が拮抗しているので、どこが勝つかわからない面白いリーグだと思います」
ティリ監督は選手をフラットに見ており、選手起用は昨季までとはガラリと変わった。今まで出場機会の少なかったミドルブロッカーの小宮雄一郎が先発に定着し、アウトサイドの渡辺奏吾も出場機会が増えた。先発メンバーの調子が上がらなければスパッと代える。
その采配を間近で見ている南部GMは言う。
「この場面でこの選手に任すの? 大丈夫なんかな? ってこちらはついヒヤヒヤしてしまうんですけど(笑)、選手も緊張感があっていいのかなと。今まではほぼ固定メンバーで戦っていましたが、今は『こんなところで使われるってことは、オレ期待されてるんだな、やらなあかんな』と全員が感じるんじゃないですかね。そうした選手起用や、普段のコミュニケーションの取り方を見ていても、選手1人1人をすごく大切にしているなと感じます」