サムライブルーの原材料BACK NUMBER
フロンターレ優勝の「陰のMVP」登里享平 “エンタメ隊長”だけでなく“チームの目”でもあった
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byEtsuo Hara/Getty Images
posted2020/12/05 17:00
2009年の入団以来、フロンターレ一筋の登里
「指示するためには情報把握をしなきゃいけない」
有観客試合初戦となった7月11日、ホームでの柏レイソル戦。1-0とリードしていた前半42分のシーン。相手が後方からつなごうとしているところを前からハメにいって出してきたパスを登里がカットしてそのまま前線でフリーになっていた家長にワンタッチで送って、追加点を挙げた。
「指示するためには情報把握をしなきゃいけない。自分としても守備しながらピッチ全体を見てプレーしようと心掛けていて、あのシーンも前でフリーになっていることは分かっていました。(4-3-3の)システムの兼ね合いも多少あるのかもしれないけど、今年はこんなふうに(パスカットしてチャンスにつなげる)シーンが多いし“こんなに見えていたっけ”というのは正直ありますね」
三笘、齋藤学、長谷川竜也ら左ウイングに入るタレントたちがサイドに張れば自分は中に入ってパスを受けられるポジションを取って相手の注意を引く。そうすることでアタッカーの仕事をやりやすくする。空いているところを探す、つくる作業に一枚も二枚も噛んでいる。
「自分が見えていることを声に出すことを私は求めます」
ADVERTISEMENT
「前に何歩か出てポジションを取ることで相手も凄く気にするようになる。(相手を)絞らせてから、味方を使ってあげたり、味方が仕掛けるタイミングで自分もランニングを掛けにいったりしてそういうサポートは常に意識しているつもりです」
しっかりとチームの目になっているからチームの口にもなれる。
筆者が構成を担当した風間氏の著書『伝わる技術~力を引き出すコミュニケーション~』(講談社)ではこうある。
「私の言う『ハードワーク』というのは意味が違います。ただ走ればいいということではなく、まず最初に見ること。そして情報をいかに取り入れるかということ。そして情報をできるだけ速く処理するために、頭の中を動かすこと。その次に技術を正確にやり続けるということです。これが本当のハードワークですが、あと1つ重要なことがあります。
それは声を出すことです。意外に思えるかもしれませんが、自分が見えていることを声に出すことを私は求めます。声を出すことで、仲間の目になることもできますから、チーム全体の目にもなれるわけです」