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フロンターレ優勝の「陰のMVP」登里享平 “エンタメ隊長”だけでなく“チームの目”でもあった 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byEtsuo Hara/Getty Images

posted2020/12/05 17:00

フロンターレ優勝の「陰のMVP」登里享平 “エンタメ隊長”だけでなく“チームの目”でもあった<Number Web> photograph by Etsuo Hara/Getty Images

2009年の入団以来、フロンターレ一筋の登里

「憲剛さんも“こいつ分かってないな”っていう感じでした(笑)」

 チームの目となり、情報処理して技術を出して声を出す。それがすべてそろって、延々と繰り返して初めて風間氏が定義するハードワークとなる。攻守に圧倒するフロンターレのスタイルに求められるそのハードワークを登里は決して怠らない。

 チームの良き目、良き口になれたのも、彼には良き耳があったからだと感じる。

 チームの頭脳である中村憲剛から吸収すべく、しつこいばかりに聞いてきたという。

「元々“憲剛さんみたいになりたい”という気持ちが自分のなかにあって、どういうふうに考えてんねやろって昔からよく聞きにいってました。憲剛さんは分かりやすいように言葉をかみ砕いて説明してくれるんですけど、俺にそのベースみたいなものがないからあんまり理解できない。憲剛さんも“こいつ分かってないな”っていう感じでした(笑)。そうしたらもっとかみ砕いて説明してくれるんです」

 普通ならお互いにあきらめてもおかしくはない。

「突貫小僧」と呼ばれていたくらいだから、そもそもプレースタイルが180度違う。

はっきり“目線が合う”瞬間があった

 それでも登里は聞きにいき、中村はかみ砕いた。同じポジションの車屋紳太郎に語っていることまで近くまで寄って、聞き耳を立てた。

 憲剛さんみたいになりたい――。

 純粋な憧れというものは不可能を可能にするから面白い。

 中村憲剛という存在は言うまでもなく、チームの目であり、チームの口である。そしてチームの顔である。

 ちょっとでも理解したい。その気持ちが弱まったことなど一度もない。

 そんな中村とはっきり“目線が合う”瞬間があった。

 心でガッツポーズした、その瞬間が――。

後編に続く

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