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南野拓実の最低評価は事実も リバプールでのプレミア初フル出場を“失敗”とするには尚早なワケ
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2020/11/29 17:40
特筆すべきシーンは確かになかった。それでも過密日程で野戦病院化しているリバプールにあって、南野拓実にはまだチャンスがくるはずである
例えば64分にシュートの一歩手前まで持ち込んだシーン。ロベルト・フィルミーノが左サイドに開いたことで中央のスペースが空き、右サイドバックのミルナーからのスルーパスと当時に2列目から走りこんで一気にチャンスまで持ち込んだ。
普段は前線の選手としてプレーし、裏への飛び出し方、ゴールへの向かい方を知っている南野だからできるプレーだ。
後半はいくらか前線でボールに絡むプレーが増えたが、それでも全体的に存在感が薄かったことは否めなかった。インサイドハーフのポジションでも“南野色”を出したプレーをもっと見せることができれば、クロップの御眼鏡にかなう時が来るかもしれない。
「前線の守備」を中盤でしてしまった
攻撃に課題が残った一方で、守備にも物足りなさが残る。ひとえにインテンシティの低さである。
フロント3の守備はチェイシングがメインだ。相手のディフェンスラインに対して深い位置までプレスをかけてボール回しに余裕を与えない、ひいては最終ラインの押し上げを目的をしている。下手に突っ込みすぎてかわされてしまえば意味がないので、パスコースを切りつつ寄せていき、徐々に選択肢を減らす、というのがリバプールの前線の守備だ。
南野はその「前線の守備」を中盤でしてしまっていた。
前線の選手とは異なり、中盤では攻撃を止めること、そしてボールを奪うことが求められる。中盤を突破されてしまえば、最終ラインがズルズルと下がってしまうからだ。
自陣のアタッキングサードまでボールが運ばれようとしている場面でも南野のプレスは中途半端で、簡単にかわされてはたびたびゴール前まで持ち込まれていた。
もちろんフィジカル面の向上も必要ではあるが、寄せの甘さからピンチを招いてしまうのは、リバプールの中盤を務めるにあたって致命的な欠点だ。9分にスルーパスから抜け出され1対1のピンチを迎えた時も、ニール・モパイに対しフィジカルコンタクトを取っていれば、少なくとも質の高いラストパスは防げただろう。