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久保建英と同じ19歳、“J屈指のドリブラー”斉藤光毅の「キャンセル力」とは【ベルギー移籍】
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/11/16 17:03
ベルギー2部のロンメルSKへ完全移籍することを発表した、横浜FCの斉藤光毅
直前でプレーを変えられる「キャンセル力」
メディアが「あの選手はあの形が得意だ」と評するようなプレーは、マッチアップする相手も頭にインプットしています。それだけに、シュートモーションに入ったけれど打たない、クロスを入れようとしていたところで切り返す、といったギリギリでプレーを変える「キャンセル力」が、戦いのステージが上がるほど重要な要素になっていきます。
10月31日に行なわれた湘南ベルマーレ対横浜FC戦で、「キャンセル力」が存分に発揮された場面がありました。左サイドからドリブルで持ち込んだ斉藤は、3度の切り返しで対峙するDFを完全に振り切り、ゴール前へクロスを入れました。瀬沼優司の右足ボレーが左ポストを叩いた場面ですので、覚えている方もいるでしょう。
この場面での斉藤は、「こうなったらこうしよう」とあらかじめ決めていません。一瞬の判断の遅れが致命傷となる局面で「キャンセル」を繰り返し、最終的に決定的なクロスへ結びつけていったのです。
そうしたプレーは以前からやっていた、と感じる方もいるでしょう。そのとおりですが、中身はまったく違います。彼とのやり取りでは、あらゆるプレーを論理的に理解してもらっています。感覚に頼ったプレーではないので、再現性が高まっているのです。1年前と同じようなプレーも、斉藤のなかでは確信を持って実践できていると言えるでしょう。
同世代の久保建英に刺激を受けて……
11月12日に会見を開いた斉藤は、「個人的にはFWで勝負したい」と話しました。彼の強みがドリブルなのは間違いありませんが、私は「裏抜けのうまい選手だな」という印象を抱いていました。横浜FCではチャンスクリエイトの仕事が多いですが、DFラインの背後を取る動きに長けています。相手のゴールにより近いポジションでプレーしたら、具体的には2トップの1人を任されたら、もっともっと得点に絡めるという期待を抱かせます。
斉藤がロンメルへの移籍を決意したのは、CFG傘下でしっかりとしたビジョンのあるクラブということはもちろん、同世代の選手に刺激を受けているからでもあるでしょう。同い年の久保建英がスペイン1部のラ・リーガでプレーし、日本代表にも選出されていることで、斉藤もより厳しい環境で自分を磨きたい、という思いを強くしてきたはずです。ヨーロッパでの挑戦はベルギー2部からのスタートになりますが、彼の視線はもっと先を、もっと高いところを見据えているのです。
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