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大野雄大と菅野智之の一騎打ち? 沢村賞争い、「完投」は短縮シーズンで重視されるか
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2020/11/10 11:05
中日・大野雄大は巨人・菅野智之と沢村賞を巡って争うことになるだろう
実質的に大野と菅野の一騎打ちになる
達成項目が最多なのは大野の3。菅野、森下、東浜、山本、西、千賀が2項目となっている。すぐにわかるように、勝率と防御率は試合数が減った今シーズンでも、到達に大きな影響はない。一方で登板数から奪三振までは積み上げる数字のため、短縮シーズンの影響は大きく出る。そういう事情を考慮したとき、ひときわ光って見えるのが大野の完投数だろう。
選考委員会の議論は、受賞すれば史上最多に並ぶ3度目となる菅野と、実質的な一騎打ちとなることが予想される。先発が予想される14日のDeNA戦(横浜)で菅野が勝てば、達成項目は「3」で並ぶ。タイトルは菅野の最多勝は確定済み。大野は最多奪三振と最優秀防御率の2冠が濃厚だ。
個人の比較では投球イニング、奪三振、防御率、完投では大野が上回り、勝利数、勝率は菅野が上。登板数は同数となる見通しだ。
基準の見直しは検討されるべきだが
昨シーズンの「該当者なし」は19年ぶりであり、歴史上、必ず受賞者を選んできたサイ・ヤング賞との大きな違いでもある。選考委員会としても苦渋の決断だったと思われる。特例シーズンだったことを考えれば、なおさら達成項目の少なさは2年連続の「該当者なし」とする理由にはならないだろう。大野か、菅野か。ここで注目されるのが昨シーズンの堀内恒夫選考委員長の談話である。
「賞のレベルを落としたくなかった」
山口俊(巨人)と有原航平(日本ハム)がそれぞれ4項目をクリアしていたものの、決め手に欠いた。山口がゼロ、有原が1と完投数の少なさが問題視されたのは明らかだ。2人の優劣はつけがたく、かといって同時受賞には踏み切れない。では6完投の大瀬良大地(広島)はどうだったかというと、登板数以外はクリアできていなかった。
そもそも項目の基準が厳しすぎる、野球のスタイルが変わってきているという声は強くなっている。2年前から7イニング自責点3以下の「日本版QS」が、先発試合数に占める割合も参考にされるようにはなっている。完投重視への是非ももちろんあるだろうし、基準の見直しは、速やかに検討されるべき課題だろう。
ただ、選考委員会は現時点でのルールに従うしか道はなく、すなわち「先発完投型」を理想として求めている。歴代の受賞者に例のない、大野の11勝という勝利数を問題視するよりも、圧倒的な完投能力を評価することが賞の理念には近いと思う。