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「クルマに追突され、背骨3カ所骨折…」大事故にあった“自転車フリーク”が「自室」で10万km走破した話
text by
山本健一Kenichi Yamamoto
photograph byTsutomu Iwabuchi
posted2020/11/04 20:00
自転車のオンラインプラットフォーム「Zwift」で、仮想空間上の仲間とチャットを楽しみながら練習を積む岩渕努さん
文字を打ちながら自転車を漕ぐ
この体験が岩渕さんを突き動かした。
「こういうグループライドって日本で定期的には開催されてない。こういうのがもっとあれば、ズイフト人口も増えて、サイクリストの輪も広がるし、自分のトレーニングとしても成果が上がるんじゃないかと思ったんです。2019年の1月にSNSで、ミートアップ機能(日時を指定し参加者と同じライドやトレーニングを行うマッチング機能)を使ってグループライドを定期開催したいと呼びかけ、週に2~3回初歩的なライドを始めると、しだいに人が集まるようになりました」
岩渕さんは「コミュニケーションが取れるというのがズイフトの一番の醍醐味」といい、つらく単調な自転車の屋内トレーニングに革新をもたらしたという。
「オンラインでその場所に行くと、誰かが走っているから、早起きして自転車に乗ろうかな、と走るモチベーションにはなります。仲間とチャットでやりとりしたり」
でも、自転車を漕ぎながら文字を打つのは大変なのでは?
「それがですね……トライアスロン用のハンドルの先端にキーボードを取り付けています。これは競技をしているときの姿勢なので、僕にとってはとても楽なのです。いつもは右側にマックブックを置いて、違うデータを見ながら漕いでいます(笑)」
「自転車専用小屋」を建てました
気になる自宅での練習場所は、まさかの「専用小屋」だという。
「家を新築したときに別宅の自転車部屋を建てました。絶対に自転車を家の中に入れないという妻との契約を守るためです(笑)。僕は転勤族でこれまで入ってきた家の壁紙やカーテンを自転車の油で汚してきたし、どうしても砂も入るので妻に煙たがられて……。別宅なら音もしないですし、朝方に起こしてしまうこともない。防音対策にコンクリート基礎を入れて、断熱材も入れました。でももう少し大きく作ればよかったかな、と思っています(笑)」
4.5畳の自転車部屋にはトレッドミルと自転車の室内トレーナー、そしてバイクが保管されている。「狭い」と漏らしているが、最高の練習環境だろう。いま考えられるeスポーツの最先端のスタイル……なのかもしれない。