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「クルマに追突され、背骨3カ所骨折…」大事故にあった“自転車フリーク”が「自室」で10万km走破した話 

text by

山本健一

山本健一Kenichi Yamamoto

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photograph byTsutomu Iwabuchi

posted2020/11/04 20:00

「クルマに追突され、背骨3カ所骨折…」大事故にあった“自転車フリーク”が「自室」で10万km走破した話<Number Web> photograph by Tsutomu Iwabuchi

自転車のオンラインプラットフォーム「Zwift」で、仮想空間上の仲間とチャットを楽しみながら練習を積む岩渕努さん

 そんな専用部屋で毎日漕ぎまくっていた岩渕さんが、注目されるまでにそう時間はかからなかった。

「2019年の3月から、ズイフトの公式イベントとしてグループライドを開催できるようになったんです」

 そしてコミュニティを最大限生かすために2020年5月にeスポーツチームの、JETT(Japan eSports Tempting Team )を立ち上げた。

「チームの目標は2つあります。ひとつは日本のサイクリストのコミュニティをもっと広げること。もうひとつは世界で一番のグループライドをつくること。リーダーが寡黙だったり、よく喋るけど統率を取らなかったり、逆に厳しく指示をするなどグループライドはリーダーの人柄によって、様々な個性があります。僕らが目指しているライドは、誰かが遅れてしまったらみんなで助け合う、ライダー同士がリスペクトし、チャットで楽しくトレーニングができる、そういう場所です」

平日4時間半、週に1000km

 そして公式イベントを開催するころから、練習時間がグッと増えていったという。

「ズイフトを始めた当時は月に500~700km、事故前の練習量もそれくらいでした。でも、今は週に1000km、トレーニングの時間は28~30時間がひとつの指標になっています(笑)。週に8回イベントを主催していて、それだけで500~600km。個人のトレーニングとして約400km乗っているので、平日も4時間30分くらいこいでますね」

 フルタイムワーカーながらもプロ選手並みのトレーニング時間だ。しかし、この長時間の練習もつらくはないという。

「乗っていると時間は本当にあっという間に経ってしまう。職場の同僚など、一般の方には“おかしい”と言われますが……(笑)。好きだから、楽しいからというのが大前提。苦しんで1000km乗っているわけではありません」

 フルタイムで働きながら、どのように時間を捻出しているのだろうか。

【次ページ】 世界で10人の10万km突破

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