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かなりの痛手…ホッケー女子日本代表を変えた監督が五輪を待たずに退任した理由
posted2020/11/01 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
YUTAKA/AFLO SPORT
これも新型コロナウイルスの影響と言っていいだろう。
ホッケー女子日本代表「さくらジャパン」のアンソニー・ファリー監督が10月末をもって退任することになった。
10月末というのはもともとの契約期間通りであるから、契約満了という形ではある。
ただこの契約期間であったのは、東京五輪のスケジュールを考えてのことにほかならない。オリンピックが延期になったのに合わせ、契約を延長することができなかった結果だ。
延長しない理由として、世界的な新型コロナウイルス感染拡大の状況のもと、家族などの事情もあり日本で過ごすことは困難であると日本ホッケー協会側には伝えられていたという。
ただ、母国のオーストラリアに戻るというわけでもなく、10月20日、アメリカホッケー協会はすでにアメリカ女子代表の監督に就任することを発表していた。複雑な思いを抱くスタッフもいるという。
契約延長がかなわなかった理由はどうあれ、日本にとっては痛手だ。
従来とは異なるアプローチで人心を掌握した
何よりも、選手からの信頼は厚かった。
2016年リオデジャネイロ五輪でカナダ男子代表を率いるなどの経歴を持つファリー氏は、日本協会が初めて実施した監督公募の末、2017年6月に就任した。
監督公募そして初の外国人指導者の登用は、メダル獲得という大きな目標あってのことだった。
過去最高成績は2004年アテネ五輪の8位。以降の大会は出場するものの10位、9位、10位。現状打破と日本開催の大会での躍進を期していた。
就任後、従来とは異なるアプローチで人心を掌握する。
フォワードの清水美並は変化をこう語った。
「前は、歳が上の人たちが引っ張っていって、下はそれについていって決められたことを忠実にやる感じでした。今は下の子も伸び伸びやっているし、自分が自分が、という主張も1人ひとりに出てきています。雰囲気もよくて、練習中も、年齢に関係なくコミュニケーションがとれています」