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かなりの痛手…ホッケー女子日本代表を変えた監督が五輪を待たずに退任した理由
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2020/11/01 11:00
昨年8月、東京五輪のテストイベントで会見を行うファリー氏
「散らばりなさい、いろいろな人とかかわりなさい」
「(ファリー監督は)同じグループで一緒にいると、『散らばりなさい、いろいろな人とかかわりなさい』と来たときから言っていました。こんなこともしました。ゲームみたいな感じなんですけど、『このグループの中で、新しくみつけたことを3つ自分に報告してきて』と、ランダムにあてる。
あてられた人は、あまり知らない先輩に好きな食べ物や好きな国とか聞きに行く。それがコミュニケーションになります。アンソニーが来てからは選手の意見も入れながら監督と選手でやっています。雰囲気もオープンな感じでやりやすいですね」(清水)
リオにチーム最年少プレイヤーとして出場した河村元美も語っている。
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「(リオは)試合では消極的だったし、存在感がなかったですね。今は、歳が下の子たちも居心地がいいと思います」
チーム内の風通しをよくすることで雰囲気を変えた。
2018年のアジア大会で初優勝など、結果も出した
戦術も「今までだったら退いて守備を固めて、そこからのカウンターでチャンスを作る感じでした。今のチームは前からプレッシャーをかけて、そこで奪って攻めていくスタイル。獲られる以上に得点を狙っています」(清水)。
試合のたびに選手1人ひとりに映像の分析を求めた。試合でのプレーに向き合わせ、判断力を高めるための試みもまた、選手に刺激となった。
さらには多くの選手を代表に呼んで競争を促す試みなども含め、グラウンドの内外の改革を実施。2018年のアジア大会で初優勝するなど、結果も出してきた。
そうした改革の成果は、東京五輪で示すはずだった。
ただ、もはや現実は変わらない。新たな現実を受け止め、進むほかない。