Jをめぐる冒険BACK NUMBER
岡田武史の「自立と自律」の興味深い回想と、森保戦術のカギに急浮上しうる選手は…
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2020/10/14 17:40
アーセナルのペペとの対面勝負でやり合う中山雄太。左利きのマルチロールとして、高い潜在能力を見せた
交代なしで4バックと3バック併用可
コートジボワール戦で日本代表は、最後まで4-2-3-1で戦い抜いたが(植田直通の投入によって3バックに変えたわけではなく、森保監督は「そのまま4バックの右サイドに入れた」と明かしている)、もし、試合中に3-4-2-1に変更しようとするなら、中山を3バックの左に、右サイドバックの室屋成を右ウイングバックに、右サイドハーフの伊東純也を左ウイングバックに移せば、選手交代の必要もない。
「センターバック、左サイドバック、ボランチという複数のポジションができるように、と彼には要求している」と森保監督は言う。カメルーン戦で前半は右サイドバックを、後半からは3バックの右を務めた酒井宏樹にも言えるが、こうしたユーティリティプレーヤーの存在が、戦い方の幅を広げてくれる。
ベンチが指示を出す前に、ピッチ上で判断し、戦い方を変えられるような、自立した選手たちによる自律した集団――。これこそ、森保監督が究極的に思い描くものだろう。
南アW杯、デンマーク戦では……
10年の南アフリカ・ワールドカップで日本代表は、グループステージ第3戦のデンマーク戦にそれまでの4-1-4-1から4-2-3-1に変更して臨んだが、うまく機能しなかった。すると、前半の7分すぎにボランチの遠藤保仁がピッチサイドに駆け寄り、岡田武史監督に4-1-4-1に戻すように進言するのだ。
こうした行動ができる遠藤保仁は、自立した選手のひとりだろう。
実際、岡田監督も「(自分が率いた二度の日本代表の中で)自立していたのは、ヒデ(中田英寿)、ヤット(遠藤)、(本田)圭佑、ほかにも(田中マルクス)闘莉王とか。でも、決して多くない。自立した選手が2、3人では自律したチームにならない、というのが俺の感覚。そうした選手が6、7人くらい集まらないと」と話していた。