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連係不足は“想定内” 19歳久保建英が森保Jで見せた「身体能力差を埋める」クレバーな技術
posted2020/10/14 12:25
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph by
JFA
25分+61分が、これから意味を持っていきそうだ。
10月9日のカメルーン戦に65分から出場していた久保建英は、13日のコートジボワール戦でスタメンに名を連ね、後半途中の61分までプレーした。
海外クラブ所属選手が森保一監督のもとに揃うのは、19年11月以来だった。久保に限って言えば、日本代表のピッチに立つのは同10月のタジキスタン戦以来である。カメルーンと0対0で引分けていた日本代表は、コートジボワールに1対0で勝利した。88分に途中出場した植田直通が、その3分後に決勝ヘッドを突き刺した。
カメルーン戦、コートジボワール戦ともに、久保は得点に絡めなかった。だからといって、見どころがなかったわけではない。昨シーズンからラ・リーガでプレーする19歳は、ディティールを突き詰めたアクションで質的な優位性を発揮している。
身体能力に優れるアフリカ勢相手に見せたプレーを、中西哲生氏に解説してもらう。10代から久保を間近に見てきた中西氏は、久保のプレーを心理的側面からも解き明かす。
◆◆◆
カメルーン戦では2つのプレーに触れるべきでしょう。84分の左サイドからの仕掛けと、試合終了間際の直接FKです。
「顔を上げた」のは相手の態勢を崩すためのフェイント
左サイドからの仕掛けは、「顔を上げるフェイント」がポイントになっています。DFとの1対1の局面で、久保はボールに視線を落としながらタテへ持ち出し、一度顔を上げてゴール前へ視線を向けます。対峙する選手は「ここでクロスを上げてくる」と思ったに違いありません。久保が顔を上げた直後に、左足のアウトサイドを出している。クロスを予測してブロックしようとしたのです。
ところが、久保はさらにタテヘドリブルします。顔を上げたのは相手の態勢を崩すためのフェイントで、もう一度顔上げてゴール前を確認してからクロスを上げたのでした。詰めていた大迫勇也には合わなかったものの、クロスを入れるまでの仕掛けはイメージ通りだったと言っていい。
2枚の壁は右足のキッカーが蹴ってくることを想定していた
試合終了直前の直接FKは、彼らしい整理されたフォームでシュートを打っています。ペナルティエリア右外からのFKに対して、カメルーンは2枚の壁で対応してきた。久保自身が試合後のフラッシュインタビューで「壁の位置があまり良くなかったので、狙えるかなと思って」と話していましたが、2枚の壁は右足のキッカーが蹴ってくることを想定した立ち方をしていたのです。左足のキッカーが狙う判断は正しかったでしょう。
GKの頭上を越えたシュートはバーを叩きました。得点になってもおかしくない一撃でしたが、ボールスピードから推測するとニアサイドの上を狙ったはずです。久保なら十分に決められるシチュエーションでしたから、悔しさが残ったに違いありません。