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正代、初優勝の“アイスクリーム話”から“巨人のウッディ”まで スポーツ新聞の「ゴキゲンさ」がいい 

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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posted2020/09/30 08:00

正代、初優勝の“アイスクリーム話”から“巨人のウッディ”まで スポーツ新聞の「ゴキゲンさ」がいい<Number Web> photograph by KYODO

秋場所千秋楽で初優勝を果たした正代。新十両会見で「なるべくみんなと当たりたくない」と漏らしたネガティブな性格や、祖母の正代正代(しょうだい・まさよ)さんも話題に。

 テレビ解説や紙面で言い続けてきたが、本人も周りも直す意欲が見られないので半分は諦めていたという。するとその欠点が直ってきたと。

《今、気が付いたのですが、正代を強くしたのは俺。少し自慢に聞こえませんか? まぁ、いいか。本当だもの。》

 いよっ、ゴキゲン!

横綱も指名するほど「稽古相手」として人気だった

 一方で日刊スポーツに載った「かつての弱点が成長きっかけ」という記事も面白かった。

 躍進を支えたのがまさにその、立ち合いであごが上がる弱点だというのだ。え!?

《井筒親方も正代の入門当時から指摘してきたが「正代の場合は体を丸めることが逆にストレスになる」と気付き、ここ1年は矯正しなかったという。》

 さらに興味深いのは正代は絶好の“稽古台”だからこそ成長できたという。巡業の三番稽古では横綱、大関陣に指名されることが多かった。なぜ稽古相手として人気だったのか?

「正代はあごを上げてるから、やってる方もいい稽古台になる。思い切り当たれるから」(井筒親方)。

 弱点と呼ばれた立ち合いのおかげで高いレベルの相手と稽古を重ねられた。それが成長のきっかけとなったという親方の見解。

 面白いなぁ。あごを引けという大御所の指摘も当たっていたのだろうし、それを逆利用して成長させようとした現場の判断も当たったことになる。

 あと忘れちゃならない情報はスポニチにあった。

《新商品が出るとすぐに購入するほどのアイスクリーム好きで、血糖値が高くなる傾向にあったが、病院を替えたことで数値も安定した。》

 正代が体調管理に気を使いだして好調になったという記事だが私はスポーツ紙でこういうのを読みたかったのかもしれない。これから暗いニュースに直面したら正代がアイスクリームを食べている風景をみんなで想像すればいいと思う。

7月末に突如登場した『巨人トイ・ストーリー打線爆発』

 最後にもう一つスポーツ紙で気になったネタを。どうしても紹介したい”芸風”があるのだ。

 それは『マトリックス岡本 怪走グラブ避け 快走キング23号』(日刊スポーツ9月26日)である。

 これは何かと言えば、

《巨人には「マトリックス・和真」がいる。岡本和真内野手(24)が4回の攻撃時に、映画「マトリックス」ばりの動きで中日二塁手を翻弄。7点目のホームを踏んだ。銃弾が止まって見えるかのように、2回には難しいボールをスタンドイン。》

 要は、岡本の動きや活躍を映画「マトリックス」にかけて書いているのだ。

【次ページ】 《巨人のバズ・ライトイヤーも、この回に暴れた。》

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