月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
正代、初優勝の“アイスクリーム話”から“巨人のウッディ”まで スポーツ新聞の「ゴキゲンさ」がいい
posted2020/09/30 08:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
KYODO
9月28日(月)のスポーツ新聞各紙の一面には注目していた。大相撲・正代の初優勝か、それとも著名俳優の自死のニュースか……。
東京版の6紙のうち、自死が一面だったのは4紙。正代の優勝を伝えたのは東京中日スポーツ1紙。私は迷わず東京中日から読んだ。そのあとは阪神をいつも通りに一面にしていたデイリースポーツを。この日の見出しは『原口一丸打破』であった。ああ、これだこれ。
カラフルな紙面でド派手に娯楽を伝えてくれるスポーツ新聞
念のために書いておくと、俳優の自死を一面で報じることを責めているわけではない。大きなニュースだし、少なくない人にとって知りたい情報だろう。ただ私の気分で言うと、こういう衝撃的なニュースが発生したときこそ日常を求めたかったのである。
有名人の死は影響も大きく、人によっては不安を感じソワソワしてしまうかもしれない。とくにコロナ禍ではさらに暗い気分になる。
そんなとき私は目先の日常を感じることにしている。昨晩あれだけ食べたのに朝起きたら腹が減っていたとか、深刻なニュースを見つつもおならが出てしまう自分の間抜けさとか、そういうどうでもいい実感ほどいい。
日常をつきつめると大事なことしか考えないが、しかし日常には結構なくだらなさも笑ってしまうほど同居している。なので日常を楽しむようにしている。
その延長線上の一つにあるのがスポーツ新聞のゴキゲンさだと思う。
カラフルな紙面でド派手に娯楽を伝えてくれるスポーツ新聞は「無くてもよいかもしれないが、無くては困るもの」だと思っている。これを楽しめるうちは余裕があるということだ。大切な媒体だと思う。
ゴキゲンな北の富士「正代を強くしたのは俺」
では、さっそく読んだ大相撲・正代の初優勝記事(9月28日)。
東京中日スポーツの名物でもある北の富士のコラムは、
《どうして正代の相撲が変わったのか皆さんは不思議がるが、私はあごさえ引けば正代の持つ全ての欠点が解消されると分かっていました。》