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コントレイル三冠馬へ向け挑む秋初戦 「過大評価」の声をはねのけた“走る馬”の苦悩とは
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2020/09/25 20:00
19年東京スポーツ杯2歳S(GIII)時のコントレイル。単勝2.5倍の1番人気に応えた。27日の神戸新聞杯(GII)では、1倍台のオッズが確実視される
“走る馬だからこその苦悩”は大きい
“競馬”であるだけに、何が起こるかは分からない。だから、無敗を守って三冠馬になりたいと考えているであろう陣営が、現在、大きなプレッシャーを感じている事は容易に察せられる。中でもコンビを組む福永祐一騎手にかかる重圧は大きいだろう。ファンサービスにも積極的な彼なので、この中間も数々のマスコミでコメントを発しており、その発言からも心中が見え隠れする。
「菊花賞よりもまずは神戸新聞杯をいかにして乗り切るかで頭が一杯です」
あるテレビで放送されたコメントではこのような趣旨の話をしていた。GIで距離も初めてとなる3000メートルの菊花賞は、ある意味、負けても言い訳の出来る立場である。それに対し、神戸新聞杯はGIIで、これより長い距離の日本ダービーも制しているのだから「勝って当然」と見られる向きもある。しかし、陣営としては、ただ勝つだけではダメで、次の菊花賞へ向けダメージが残らないようにした上で、かつ、次の距離延長にも対応出来るような競馬を教え、なおかつ勝利しなくてはならない。そのさじ加減にパートナーは頭を悩ませているという事だろう。
外野から見ている限り、あれだけのスーパーホースなら神戸新聞杯を楽にパスして、本番の菊花賞でもゆうゆうと三冠を達成出来るだろうと思いがちだ。しかし、当事者達にとってはそんな簡単なモノではない。関係者にしか分からない“走る馬だからこその苦悩”が存在しているのである。
コントレイルを初めて見た衝撃
そんな思いも感じつつ、この神戸新聞杯に注目したいわけだが、思えばこの主役を個人的に初めて目の前で見た時は本当に衝撃的だった。昨年の11月16日の東京競馬場。東京スポーツ杯2歳S(GIII)でR・ムーア騎手を背にしたコントレイルは2着のアルジャンナに5馬身の差をつけて真っ先にゴールに飛び込んだ。2着のアルジャンナから3着のラインベックまでがまた4馬身離されていたのだから正に独擅場といって過言ではない勝ちっぷりだった。それもそのはず、走破タイムは1分44秒5。従来の記録を一気に1秒4も更新したこの破格のレコードタイムを、新馬戦を勝ったばかりの身、つまりキャリア僅か2戦目でマークしたのである。