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戦略家・錦織圭、戻らぬ感覚と新たな引き出し 13カ月ぶり四大大会を復調の契機に
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2020/09/26 17:00
全仏オープンの前哨戦では1勝のみに終わった錦織圭。果たして全仏ではどのようなプレーを見せてくれるか
右ひじの違和感とフォアハンドの不安
復帰後の4試合では、フォアハンドでもバックハンドでも、ラケットヘッドを加速させてピシャッと叩く感覚が見られない。本来のヘッドスピードが出ていれば自然にトップスピンがかかり、ボールを押さえ込めるのだが、その感じが出てきていないようだ。
意図的に順回転を増やすか、こわごわ振って(だからヘッドが走らず、スピンがかからず)大きくアウト、そんな場面が多い。しっかり叩けているショットもあるが、散発的で、競った場面では自信のなさが顔を出した。
ハンブルクの開幕前には「右ひじはまだちょっと違和感があるが、すごく良くなってきている」と話した。後半に比重を置いたコメントだが、違和感があるにはあるのだ。
それもフォアハンドの不安につながっていると思われる。違和感が消えないなら、それをひとまず受け入れ、感覚のズレを修正し、ショットの成功例を増やして自信をつけていくしかない。
2018年の完全復調も7カ月かかっている
思えば、右手首の故障から復帰した18年も、1月のニューポートビーチでの復帰戦から完全復調まで、実に7カ月かかっている。「復調」とは全米の4強入りを指す。
この年は4月のマスターズ1000、モンテカルロで準優勝しており、これをもって復調と見る向きもあるが、本人はその時点でも悪い感触は「全然消えていなかった」と言う。
いわく、フォアハンドが打てず、準優勝はバックハンド1本で勝ち取ったものだった。シーズンオフのインタビューでは「復帰したころが0とするなら、100になったのはUSオープン(開幕は8月末)くらいでした」と明かしている。
もっとも、100%にはるか及ばない時期にマスターズ1000で準優勝、さらに7月のウインブルドンで初の8強入りを成し遂げてしまうのが錦織の非凡さなのだが。