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三笘薫23歳、旗手怜央22歳だけじゃない! Jリーグのルーキー“空前の当たり年”なのはなぜ?
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byJ.LEAGUE
posted2020/09/20 11:30
14試合で8ゴールと大活躍の川崎F三笘薫(16節終了時点)
実力もさることながら、連戦で無理が利くあたりも大きな強みだ。そもそも大学時代は2回戦から決勝までの4試合を中1日で消化する真夏の総理大臣杯など、シビアな連戦を勝ち抜いてきた。総じて回復力に秀でた若者の“特権”が存分に生かされてもいる。
また、近年の大卒新人は高卒でプロ入りしても不思議のない実力を備えた選手が少なくない。当然、進学する理由は選手によってさまざまだが、長く大学サッカーを取材してきたサッカーライターの杉園昌之氏によると、なかなか出場機会を得にくいJクラブよりも大学で実戦経験を増やし、さらには栄養学やコンディショニングを含む自己管理のイロハを習得してプロ入りに備える選手たちが目立って増えてきたという。
つまりは、自らを即戦力へ仕上げる準備を着々としているわけだ。遠回りに見えて、その実は「急がば回れ」ということかもしれない。大学へ進む若者たちの意識の変化も今般の台頭と無縁ではないのだろう。
高卒組も「ひと昔前の新人とは違う」
ひと昔前の新人とは違うという意味では、高卒組も同じである。育成事情に明るいサッカージャーナリストの川端暁彦氏は、リーグ戦文化の定着と監督の提示するゲームモデルを理解し、実践する力がプロの世界でプラスに働いているのではないか――という。
リーグ戦文化の定着とは、2011年から始まった第2種年代(U-18、高校生)の全国規模のリーグ戦(高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ)だ。全国の上位20チームが東西に分かれ、長期にわたりホーム・アンド・アウェー方式のリーグ戦に臨んでいる。さらに全国を9地域に分けた下位リーグ(プリンスリーグ)もあり、週末の試合に備えた準備から移動(アウェー戦)に至るまで、プロに近い環境で育ってきているわけだ。
また、トレンドを踏まえたゲームモデルの立案と落とし込みを試みる指導者が増えて、基礎技術のみならず、チーム戦術に適応する術を会得した若者たちが軒を連ねつつある。高卒新人はもとより、大卒新人もそうした環境で育ってきたケースが多いわけだ。
今季は過密日程の影響もあり、日々の練習はリカバリー中心。戦術の落とし込みが難しい状況にあるが、監督のオーダーを消化し、タスクをまっとうする力さえあれば、新人でも使われる。若いタレント群のセンセーショナルな活躍はその証だろう。
現在の若い世代がいかに高いポテンシャルを秘めているか。特例措置の追い風を受け、その実体が露わになったということかもしれない。おそらく、豊作は今季限りではないのだろう。思い過ごしでなければ――。
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