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三笘薫23歳、旗手怜央22歳だけじゃない! Jリーグのルーキー“空前の当たり年”なのはなぜ?
posted2020/09/20 11:30
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph by
J.LEAGUE
空前の大豊作である。
今季のJリーグで躍動するルーキーたちだ。それも豊かな将来性を感じさせる――といった程度の働きではない。堂々、主力の一角に食い込み、しばしば勝敗の行方を決定づけるような大仕事までやってのけるのだ。
破竹の進撃が止まらない川崎フロンターレの一翼を担う三笘薫や旗手怜央ら大卒新人の活躍はその象徴だろう。さらに鹿島アントラーズで斬り込み役を演じる荒木遼太郎のような高卒新人も続々と出場機会をつかみ、見事な立ち回りを演じている。もちろん、J1、J2を問わず――だ。
新人という枠を取り払い、来年の東京五輪で出場資格のある年代(23歳以下の選手)に対象を広げると、実に100人を超える若者たちがリーグ戦のピッチに立っている。今季の新人もその一角を占めているわけだ。
「空前」だけど「想定内」?
もっとも、こうした現象は「想定内」との見方もある。例年とは異なり、特殊な事情が絡んでいるからだ。過酷な連戦を強いられる過密日程、それに紐づく5人交代制、さらにJ2、J3への降格を見送る――などの特例措置が目覚ましい台頭のトリガー(引き金)になっている。
未曾有の総力戦ゆえに、若者たちにも出番が回ってきたわけだ。降格のリスクがなく、交代枠も拡大されたことで、人選の幅が広がり、大胆な起用に踏み切るケースも増えている。主力の負傷離脱や海外移籍といった難局に直面したクラブではなおさら、若手を使う必要性が高まった。
FC東京はその好例だろうか。キャプテンの東慶悟が負傷(右第五中足骨骨折)により長期離脱に追い込まれ、チームの中核を担ってきた橋本拳人と室屋成が今夏、海外クラブへ移籍。そうした苦境から安部柊斗、中村帆高といった大卒新人を筆頭とする若いタレント群が次々と出場機会を得て、めきめき頭角を現してきた。
当然、チャンスをつかめるかどうかは当人次第。ベンチの期待に沿う働きを見せなければ、ここまで若いタレント群が脚光を浴びることもないわけだ。今季の新人が「大豊作」と呼ばれるのも、それだけの器を備えているからにほかならない。
「最強明治」……大卒新人が輝く理由
端から即戦力の触れ込みでプロの門をくぐる大卒新人は少なくないが、今季は例年にも増してレベルが高い。とりわけ、昨季の大学タイトルを総なめにした「最強明治」の面々がそうだ。前述したFC東京の中村に加え、横浜FCの瀬古樹とサガン鳥栖の森下龍矢が2月の開幕戦からスタメンに名を連ねていた。いずれも球際の争いに強く、攻守の両面でハードワークし、早々とベンチの信頼をつかんでいる。