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女子キックは「かわいい」だけではない! 「打倒魔裟斗」時代と同じムーブメントが
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byKoji Fuse
posted2020/09/12 11:30
変わり始めた女子キックボクシング界を牽引する寺山日葵。「求められるものは強さ」と語る。
女子キックが変わり始めた理由
神村が実力相応の評価を受けなかったのは、映像メディアの露出が少なかったことも理由としてあげられるだろう。では、なぜいまになって女子キックが世の中と勝負する機運が高まっているのか。神村は、かつての好敵手だったRENAの存在が大きいと分析する。
「5年前、RIZINが始まってRENA選手が女子格闘技の強さを世間に見せてくれたことがきっかけで、立ち技格闘技の女子が注目されるようになった。その流れに乗らないといけないし、ここで変わらなければいけないと思いました」
今大会最大の特徴は8月13日のトーナメント開催発表会見で神村がアドバルーンを揚げた際、何人もの選手たちが「出たい」と立候補してきたことだろう。もちろん最終的には神村がその中から8名に絞ったが、神村は選手たちの能動的な動きを素直に喜ぶ。
「マッチメーカーが選手を選ぶのではなく、選手たちがGirls Power2020を選び、出場を志願してくれた」
天心を見てたら悔しくて仕方ない
筆者の目には、中量級のキックボクシングブームの先駆けとなったK-1WORLD MAX日本大会のスタート時の雰囲気と重なり合う。昔も今も日本のキック界は各団体がそれぞれ王者を認定している関係で複数の王者が存在する。MAXが存在した時代には「打倒魔裟斗」、あるいは「世界最強決定トーナメント出場」を目標に、各団体の日本王者が日本代表決定トーナメントに自然と集まっていた。今回も同じようなムーブメントが起こっているといえないだろうか。
Girls Power2020には全団体とはいわないまでも、腕に覚えのある王者たちが集った。紅絹とともにRISE女子のツートップを張る初代ミニフライ級王者・寺山日葵は選手層の充実ぶりに目を見張る。
「私が子供の頃は男子との試合が当たり前でした。当時の女子は、この間私とタイトルを争った佐藤レイナ選手を含め2名程度。そのせいで、男子とは中2まで闘っていました」
寺山は紅絹とともに優勝候補に挙げられ注目度も高いが、その裏ではコンプレックスと葛藤があったと本音を吐く。
「私は(同門の)那須川天心の妹分として世に出たおかげで、結構他の選手よりありがたい環境でやらせてもらっていると思います。でも、チャンピオンだからといって、鼻高々になんか絶対なれない。だって天心が身近にいるんですよ。天心の背中を見ていたら、『自分なんて、まだこんなものか』と感じてしまうことが悔しくて仕方がない」