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女子キックは「かわいい」だけではない! 「打倒魔裟斗」時代と同じムーブメントが
posted2020/09/12 11:30
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Koji Fuse
「女子キックボクシングくらいは『誰が本当の日本一か!!!!』と名していろんな団体のチャンピオンだけで統一戦したい」
7月中旬、きっかけは神村エリカがSNSで呟いた一言だった。神村は2008年から2014年まで現役として活躍。エキシビションマッチながら、現在RIZINで活躍中のシュートボクシングのRENAからダウンを奪ったことで知られるキックボクサーだ。
神村の呟きにインターネットテレビのAbemaTVが敏感に反応。その流れに現役時代の神村が活動の拠点にしていたRISEが実現に向け動き、『RISE GIRLS POWER QUEEN of QUEENS 2020』(以下Girls Power2020と略)開催までこぎ着けた。一回戦(準々決勝)は10月11日横浜で、準決勝と決勝は11月1日大阪で争われる。
いくら強くなっても注目されない
9月5日に行われたトーナメント組み合わせ抽選会後、神村は筆者にこう漏らした。
「コロナが原因で有観客のイベントが衰退している中、女子にこういうチャンスが巡ってくることは奇跡だと思っています」
コロナを抜きにしても、女子キックの歴史は苦難に満ちている。過去に女子だけの興行がスタートしたケースは何度かあるが、いずれも早い段階で消滅するという負の歴史を背負っているのだ。その辛酸を味わいながら現役を続けてきた初代RISE QUEENアトム級王者の紅絹は、なぜ女子キックが短命だったかを肌で感じている。
「女子キックは長くやる選手が少ないので選手数が減るとどんどん廃れ、注目されなくなっていく。そういう歴史を繰り返していた。さらに(映像メディアで)放送されないことも普通だったので、つねにあまり注目されていないという空気は感じていました」
ジャンルを牽引する絶対的なスターが不在だったことも響いた。今大会でプロデューサーを務める神村は学生時代、地上波で魔裟斗の活躍を目の当たりにして、「自分もキックをやれば、魔裟斗さんのようになれる」と思い込んでいた。
「でも、実際には自分がどれだけ実力をつけても、世界チャンピオンになっても、ああいうふうには輝けなかった」