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ボクシングで異例の「100万円プレーヤー」が誕生! “投げ銭”成功の理由は逆輸入? 元引きこもり?
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2020/09/03 11:40
逆輸入ボクサー・坂井祥紀は日本ランカーに判定勝ち。異例の「100万円プレーヤー」となった。
「100万円プレーヤー」が誕生。
中屋会長によると、この興行を開催するにあたって立てた1つの目標が「100万円プレーヤー」を作ること。坂井のファイトマネーは70万円で投げ銭と合わせて100万円を超え、主催者の目標は達成された。山口のファイトマネーは12万円。投げ銭と合わせて90万円近くにまで達し、もう少しで2人の100万円プレーヤーが誕生するところだった。
通常は日本、東洋太平洋チャンピオンレベルで100万円というのがファイトマネーの相場だ。山口のファイトマネーにいたっては、これまでの最高額が8万円程度だったというから、文字通りに桁違いの数字になったのである。
余談だが、山口が計量後の取材で「自分は何もしていない。これだけお金が集まったのは取材してくれた人が、面白い映像を作ってくれたから」と投げ銭の全額受け取りをよしとせず、所属するワールド日立ジムの和式便所を改修する費用に充てると発言したことは書き記しておきたい。
ボクシングでの大成功の理由。
肝心の試合は、山口が2回KO負け、坂井は苦しみながらも日本ランカーに判定勝ちで日本デビュー戦を飾った。ライブ配信の視聴者数は、第3試合の山口、メインイベント(第6試合)の坂井がともに4700人をマーク。石井会長は「同時接続でこれは相当いい数字。3000いけばと思っていましたから」と驚いていた。
さて、ITを駆使すれば成功するかといえば、そう簡単な話ではないだろう。同じような試みはいろいろなスポーツやイベントで行われている。成功するケースもあれば、思うような結果が出ないことも少なくない。
そうした中、成功の要因を石井会長に聞いてみると、次のような答えが返ってきた。
「こういう(新しい)ことをやるなら協力したい、応援してあげたい、という人が多かったということだと思います。たとえば2980円の商品を販売していても、みんな3500円とか4000円とかを払って買っている。ようするにチップをつける。そういうみなさんの気持ちが成功につながったと思います」
このようなイベントがボクシング界では初めてだったこと、新型コロナウイルスの影響により業界が苦境にあることを多くのファンが知っていたこと、山口という特異なキャラクターを得られたこと、石井会長が以前からユーチューブに力を入れ、それなりの登録者数があったこと――こういったさまざまな要素が重なって、今回の結果が出たと言えそうだ。