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ボクサーの本質を捉えていた
ピート・ハミルが赤井英和を見た日。
posted2020/09/01 07:30
text by
前田衷Makoto Maeda
photograph by
Makoto Maeda
こんな偶然もあるのか。時間ができたので、昔撮った写真をスキャンしながら整理していた。その中の一枚がこれだが、ふと携帯電話のニュースに目をやると、8月5日にピート・ハミルが亡くなったという訃報が飛び込んできた。後楽園ホールの控室で試合直後の“浪速のロッキー”赤井英和(右)に話しかけているのが、ハミルである。
ハミルの死去を報じたメディアはどこも映画「幸しあわせ福の黄色いハンカチ」の原作者として紹介していたが、私には一貫してボクシング好きのジャーナリストだった。ブルックリン出身の生粋のニューヨーカー。20歳そこそこの駆け出し記者時代はグラマシージムに頻繁に通い、マイク・タイソンの師でもあるカス・ダマトからボクシング講義を受けたという。「ボクサー」という作品もある。小説の類で八百長が出てくるとうんざりして読む気がしなくなるものだが、ハミルのは例外で、ボクサーの心理がよくわかっているから違和感なく読めた。当然タイソンについても書いているが、この問題児を取り上げる時でも隣人を話題にするような暖かい視線を感じた。