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ボクシングで異例の「100万円プレーヤー」が誕生! “投げ銭”成功の理由は逆輸入? 元引きこもり?
posted2020/09/03 11:40
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
8月31日、東京・新宿フェイスで「ファーストレート Presents A-SIGN BOXING」というイベントが開催された。後楽園ホールよりも小さな500人規模の会場で、特に注目の選手が出場したわけでもなかったのに、メインイベントに出場した坂井祥紀のファイトマネーはこのレベルでは規格外の100万円に達した。ITを駆使した新しいボクシング・イベントのあり方とは――。
新型コロナウイルスの影響で入場客数を制限したこともあり、この日の観客数は70人程度。タイトルマッチはなく、4回戦1試合、6回戦4試合、8回戦1試合という構成を考えれば、ボクシングファンでさえ気がつかないような地味なイベントとして、ひっそり終わっていてもおかしくはなかった。
共感を呼んだ選手たちのストーリー。
しかし、今回の「A-SIGN」は今までの興行とは違った。横浜光ジムの石井一太郎会長と、八王子中屋ジムの中屋一生会長という38歳と41歳のプロモーターがタッグを組み、ユーチューブをふんだんに使ったイベントPR、EC物販、オンラインサロン、クラウドファンディングによる選手への投げ銭(激励賞)などを実施したのだ。
これが当たった。前座に出場する4勝2KO11敗2分の35歳、山口拓也がクラウドファンディングで77万円もの投げ銭をゲット。元引きこもり、家賃2万円のアパートでの貧乏暮らしなどなど、次から次へとユーチューブで描き出される特異にして心温かなキャラクターに人気が集まった。
メインの坂井にも37万円の投げ銭が集まった。坂井は高校を卒業して単身メキシコに渡り、海外36試合の経験をして日本に帰ってきた逆輸入ボクサー。世界ランキングに入るような選手ではないものの、こちらもユーチューブで流された「異国で10年間戦い続ける日本人ボクサー」のストーリーが共感を呼んだ。