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SNS発信から一転出場の経緯とは。
大坂なおみ22歳の重大さと影響力。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2020/09/01 10:00
大坂なおみのSNS発信が与えたインパクトは大きかった。全米オープンでは2018年以来2度目となるタイトル獲得への戦いに挑む。
エージェント、WTAと話し合い。
大坂によれば、準々決勝後にあの文面を投稿をする前に、まずエージェントであるスチュアート・ドゥグッドと電話で話し合い、それからWTAに電話をしたという。
「彼らは、私をサポートしたいと言ってくれて、試合を1日ずらすと言ってくれた。それで私はあのステートメントを出した」
WTAがすぐにそういう判断をしたのは、日本にいては実感しにくい今のアメリカの空気というものがあるのだろう。とにかく、この時点でもう大坂が棄権する必要はなくなった。
しかし、大坂の声明文からそのことは読み取れない。それが本人の意図なのか、マネージメントの戦略か、WTAの要望なのかはわからない。ただ、あの時点で事実をそのまま書けば、大坂の行動のインパクトが薄れることは確かだ。
一方、3団体の声明文でも大坂についてはまったく触れていないが、それも理解できる。大坂の思いが発端であることを明言してしまえば――では選手が同様に主義主張を訴えるたびにWTAはスケジュールを変えるのか、と極端な話になりかねない。
自身の思いと起きる事象のギャップ。
女性アスリートとして歴史上でもっとも高額の収入を得ている大坂の周辺で、実にさまざまな思惑が動くのは当然のことだろう。大坂が望むと望まざるとにかかわらず、一面的でシンプルなストーリーで終わるわけがない。
もしかしたら、ときどき大坂に感じるメンタルの不安定さは、自身の内なる思いと、実際にその思いが巻き起こす騒動の大きさとのギャップからきているのではないだろうか。
大坂は今回のあまりの反響の大きさについて、「ちょっとびっくりしたことは確か。こういう影響力を持っているのは、ビッグ3(ロジャー・フェデラー、ラファエル・ナダル、ノバク・ジョコビッチ)とセリーナ(・ウィリアムズ)くらいだと思っていたから」と語っている。
周囲や世間からの反応が怖く、よく眠れなかったとも告白した。