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SNS発信から一転出場の経緯とは。
大坂なおみ22歳の重大さと影響力。
posted2020/09/01 10:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Getty Images
全米オープンの前哨戦として、ニューヨークの同じ会場で先週行なわれたウエスタン・アンド・サザン・オープンで大坂なおみは準優勝した。
練習不足が心配されたにもかかわらず、とてもいいテニスをしていた。体もフィットし、リラックスしたムードで、パワフルかつ冷静な試合運びを見せて、初戦となる2回戦と準々決勝の逆転勝ちを含めてトップ30のプレーヤーばかりを相手に4勝を挙げた。
しかし今回、人々の心に強烈な印象を残したのはコート上のパフォーマンスではなく、若いオピニオン・リーダーとしての片鱗を見せた行動だった。
それが多くの人々の目に勇敢で崇高なものに映った一方で、事態が進むにつれ、どこか不可解な、すっきりしないものを感じた人たちがいたことも確かだ。それはなぜだったのか。会見で語った大坂のコメントなどをもとに、その背景を整理したい。
「明日は試合をしない」とSNSで発表。
アメリカのウィスコンシン州で黒人男性が白人警官に背後から銃撃されて重体となった事件を引き金に、再燃した『BLACK LIVES MATTER』運動の高まり。アメリカのプロスポーツで起こっている抗議活動の事実を知った大坂は、「自分も声を挙げなければ」と使命感に駆られ、準々決勝に勝利した日の現地の夜8時頃、「明日は試合をしない」とSNSで発表した。
それは『抗議の棄権』と世界中に報じられた。するとその約3時間後、女子ツアーを管轄するWTAと男子ツアーのATPとUSTA(全米テニス協会)が共同で声明を出した。
「テニスは競技として、アメリカで再び起きた人種差別や社会的な不公平に対して結束して反対する立場をとっている。いまこの時点において、USTAとATPツアー、WTAは、ウエスタン・アンド・サザン・オープンを一時休止することでその意を表したい。27日は試合を行なわず、28日に再開する」