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SNS発信から一転出場の経緯とは。
大坂なおみ22歳の重大さと影響力。 

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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photograph byGetty Images

posted2020/09/01 10:00

SNS発信から一転出場の経緯とは。大坂なおみ22歳の重大さと影響力。<Number Web> photograph by Getty Images

大坂なおみのSNS発信が与えたインパクトは大きかった。全米オープンでは2018年以来2度目となるタイトル獲得への戦いに挑む。

あらためて文面を見てみると。

 そして、試合が行なわれなかった27日の午後2時頃に翌日の試合スケジュールが発表されると、そこには1試合目に大坂とメルテンスのカードが組まれていた。これを受けて「大坂、棄権表明から一転、出場へ」というニュースが流れたのだ。

 この間WTAからは、大坂が棄権したとも、それを撤回したとも発表されていない。

 さらに、準決勝で勝利した大坂の「大会を棄権するとは(SNSで)言っていない。明日は試合をしないと言っただけ」という発言で、さらに混乱してしまった人も多いだろう。あらためて準々決勝後に大坂が発表したSNSの文面を翻訳してみると、こうだ。

「多くの方々が知っている通り、私は明日準決勝を戦う予定でした。ですが、私はアスリートである以前に、1人の黒人女性です。黒人女性として、今は私のプレーを見てもらう以上に、注目されるべき重大な問題があると感じています。私が試合をしないことで何か劇的なことが起こるとは考えていません。ただ、白人が大多数を占めるこの競技で話し合いを始めることができれば、正しい方向への一歩になるはずです」

かなりトリッキーだった背景。

 確かに棄権をするとは一言も書いていない。これをマスコミが勘違いして誤報を流したのだと批判する人たちがいるが、テニスツアーにおいて「明日の試合は出ないけど、明後日は出る」ということはありえない。

 なぜなら、単純な話だが、NBAやMLBと違ってテニスはトーナメント制であり、また個人競技だからだ。すでにスケジュールが発表されているにもかかわらず、「その日はプレーしません」と宣言したなら、テニスの常識として、それを棄権するという意味以外にとることはできない。

 しかし、実はその背景はかなりトリッキーだった。

 大坂の準決勝後の会見によると、大坂が抗議運動として棄権という手段をとろうとしたことは確かだ。「大会を棄権すれば、最大の関心を得ることができる。それが私のやるべきことだと考えた」と言っている。

 この数カ月、大坂が積極的に『BLM』を支持し、行動してきたことを考えれば、その心の動きは唐突なことではないし、大坂らしく素直で純粋なアクションだったのだと感じる。

【次ページ】 エージェント、WTAと話し合い。

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