月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
大坂なおみ棄権の記事を読んで。
おじさんアップデートの分岐点。
posted2020/09/01 07:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
USA TODAY Sports/REUTERS/AFLO
この「月刊スポーツ新聞時評」はスポーツ紙の楽しさと面白さを紹介する内容にしているのですが、今回は「おじさん」として自分もいろいろ考えてしまった記事について取り上げます。
それは、日刊スポーツWEBに掲載された『大坂なおみの棄権、それでもやはり違和感/記者の目』(8月27日)というコラムでした。
大坂なおみ選手が8月23日に米ウィスコンシン州で起きた警官の黒人男性銃撃事件に抗議し、27日に予定されていたウエスタン・アンド・サザン・オープン準決勝のエリーズ・メルテンス(ベルギー)戦を棄権したことについて【テニス担当=吉松忠弘】氏が書いたもの。
私はコラム内容に違和感がありました。たとえば「棄権」に関しての次のような部分。
《直前の準々決勝で敗れたコンタベイトはどう感じるだろうか。》
《それがどんなに重要な抗議だとしても、コンタベイトのプレーや人生より大事だと、記者は言い切れない。》
大坂なおみが「私はアスリートである前に1人の黒人女性です。」と表明しているのにも関わらず、ここで棄権したら準々決勝で負けた相手はどう思うのかという「記者の目」。
「個」よりも「村」の迷惑を?
さらに後半には、
《多くの人が大坂を支える。家族、親友、ファン、スポンサー、マネジメント会社、大会、ツアー、ライバル選手、そしてメディアなど、数え上げたらきりがない。》
つまり、みんなに迷惑をかけるなよと主張しているように読める。言ってみれば「個」よりも「村」の迷惑を考えろと。この展開にザワザワした。
ただ、これも長年テニスを取材し続けてきた方の一つの考えなのであれば「こういう意見もあるのか」と思いながら読める。
しかし、今回私が最も気になったのは記者の意見とは別の、ある表現なのである。