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大坂なおみ以外にもテニス界新リーダー候補。アフリカにルーツのカナダ人フェリックスの活動と思い。
posted2020/09/01 20:00
text by
フローラン・ダバディFlorent Dabadie
photograph by
Getty Images
テニス界で「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命を軽く見るな)」運動の趣旨に賛同し、若い世代のリーダーになろうとしているのは大坂なおみだけではありません。
この夏に20歳になったばかりのカナダのエース、フェリックス・オジェ・アリアシム(ATP世界ランキング21位)も時の人なのです。
大坂同様にアフリカ系の父親を持つオジェ・アリアシムは母親の故郷カナダの国籍を選びましたが、黒人アスリートとしての誇りやハーフとしてアフリカにルーツを持つことの責任も感じています。
大坂なおみの父親レオナルドさん同様に、オジェ・アリアシム選手の父親サムさんも若い時からテニスに夢中でした。子供たち(オジェ・アリアシムにも姉がいる)に自らテニス教育を与えたのです。
西アフリカから寒い冬のカナダに。
「父は西アフリカから寒い冬のカナダに26歳でやってきて、人種差別に耐え、母と家庭を築いたのです。私たちにテニスを教えただけでなく、今は自分のテニス・アカデミーを所有しているのですから、一種のアメリカン・ドリームですね」
プロテニス選手になった息子フェリックスはこう語ります。大坂なおみの母親である大坂環さんにレオナルド・フランソワさんは北海道で出会いましたが、サム・アリアシムがフェリックスの母親マリー・オジェさんに出会ったのはカナダにあるケベック市なのです。
フェリックスが13歳になった際に、父親サムさんの母国であるアフリカ西海岸の細長い国トーゴに連れて行かれ、貧困生活を送っている同年齢の子供たちを目の当たりにしたそうです。
「道沿いでパンを売っている女の子がいたのですが、小銭を渡したら表情が突然明るくなり満面の笑顔を見せてくれたのが今でも忘れられません」