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錦織圭欠場も異例づくしの全米開幕。
影響必至の暫定ランキング制度とは。

posted2020/08/30 11:50

 
錦織圭欠場も異例づくしの全米開幕。影響必至の暫定ランキング制度とは。<Number Web> photograph by Getty Images

全米オープン参戦を決めたジョコビッチ。暫定ランキング制度の中でも強さを見せつけるか。

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秋山英宏

秋山英宏Hidehiro Akiyama

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 8月といえばテニスシーズンも後半戦に入る時期だが、新型コロナウイルスの感染が拡大した今年は様相が異なる。3月以降、休止を強いられたツアーはようやく再開したばかり。初夏の英国を彩るはずのウィンブルドン選手権は開催を中止、全仏は5月下旬から9月下旬の開幕へと大幅に日程を変更するなど、ツアー日程は大きく組み替えられた。

 8月31日開幕の全米は異例の大会となる。コロナはいまだ終息せず、厳戒態勢下での開催だ。観客を入れず、大会の規模も縮小される。男女シングルスは通常の128ドローで行うが、予選は実施しない。男女のダブルスは通常の半分の32ドローで、混合ダブルスとジュニア部門は開催しない。

 また、コートに入る人数を制限するため、2つのスタジアムコート以外ではラインアンパイア(線審)を配置せず、ラインジャッジは電子システムで行なう。さらにボールパーソンも人数が減らされる。会場には40名ほどのソーシャル・ディスタンス・アンバサダー(特使)が配置され、選手や関係者のマスク着用をチェックし、ソーシャル・ディスタンシングを指導するのだとか。

 メディアもごく一部を除いて会場への立ち入りができず、記者会見はリモートで行なわれる。現場の空気を感じながら記事を書くことができないのは、我々には痛恨事だ。もしこれがニューノーマルとして定着してしまったら、と暗い未来を想像したが、さすがにそれはないだろう。

“線審なし”が定着するのは……。

 心配なのは線審の方々だ。彼らは皆、トーナメントに欠かせないピースであると自負し、責任とやりがいを胸にコートに入る。コロナ禍をきっかけに今後もライン判定はビデオでよし、となったらどうしていくのか。

 書きながら、1990年代に活躍し、'97年全仏で混合ダブルスを制した平木理化の姿が目に浮かんだ。平木は試合終了の握手のあとで、コートの右手と左手に向けて、ぺこりと頭を下げるのが常だった。「私たち選手のために審判など多くの方がかかわってくれる。その感謝の意味です」と説明したのを覚えている。

 古い人間にはやはり、線審は「人」のほうがいい。ごくまれに判定を間違えたり、逡巡したりしながら、しかし、常に公正を期してジャッジを行なう、そこがいいのだ。

【次ページ】 ナダルやハレプらが欠場を決めた。

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