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内田篤人とシャルケの愛は永遠に。
2014年に想像していた引き際とは。 

text by

中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byItaru Chiba

posted2020/08/28 11:30

内田篤人とシャルケの愛は永遠に。2014年に想像していた引き際とは。<Number Web> photograph by Itaru Chiba

CLベスト4、国内カップ制覇などを成し遂げた内田篤人。その活躍ぶりは約10年の時を経た今でもシャルケサポーターの語り草だ。

内田篤人の言葉は、温かい。

 とはいえ、大事な局面では必ず全力を出す。一方で、どれだけ入念にケアしていても、怪我をしたり、怪我が悪化したりすることはある。

 シャルケ時代に引退を決意してもおかしくないほどの怪我を負ったが。それでも可能性を手繰り寄せて走り続けてきた。その姿に、どれだけ多くの人が勇気をもらったことか。

 選手の評価というものは、人の生き方というものは、成績だけで決まるわけではない。ましてや誰かに定められるものでもない。だから、常にその時やるべきことに真正面から向き合って、その中でできることを見つけてきた。その中で培われた経験は選手としても、そして1人の人間としても、とても大きなものだったことだろう。

 いろいろな苦難を乗り越え、いろいろな経験をしてきているからだろうか。内田篤人の言葉は温かい。

 鹿島で、シャルケで、ウニオン・ベルリンで、そして日本代表で彼の口から発せられるメッセージは、いつだって思慮深く、心に秘めた熱さがあって、そして周りの人への思いやりが込められている。

 だから、彼の言葉は多くの人の心にしみこんでいく。

「みんなから寂しいなぁって」

 そんな内田が、自身の引き際について話をしたことがあった。

 2014年12月のCLグループリーグ・マリボル戦後だ。その時、鹿島の先輩に当たる中田浩二と柳沢敦の引退について報道陣に聞かれた内田は、神妙に話をしていた。

「寂しいよ。俺なんか、あの人たちについてサッカーしていただけだからね、鹿島の時は。それで優勝させてもらって。そうやって、みんなから寂しいなぁって言われながら辞めていく選手って少ないじゃない。やめるとき、どういうふうにやめられるかなって」

 あれから6年……内田は誰からも、いつまでも愛される選手として現役生活に別れを告げることになった。みんなから引退を惜しまれ、みんながもうあのプレーが見られないことの寂しさに胸を痛め、でも、ここまでの頑張りに最大限の敬意と感謝を込めた拍手を送りつづけた。

 きっと、そんな内田に憧れて、その背中を追った選手が日本サッカー界に生まれてくることだろう。物語は続いていく。

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