欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
内田篤人とシャルケの愛は永遠に。
2014年に想像していた引き際とは。
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byItaru Chiba
posted2020/08/28 11:30
CLベスト4、国内カップ制覇などを成し遂げた内田篤人。その活躍ぶりは約10年の時を経た今でもシャルケサポーターの語り草だ。
「鹿島の時もそうだったけど」
クラブへの愛があるから、契約延長にもサインをした。もしオファーがあったとしても、移籍金が発生して、クラブにお金が残る道を望んだ。それが恩義だと。
「鹿島の時もそうだったけど、これだけいい経験をさせてもらって、タダでぴょんと出るのは違うと思った。シャルケより上のクラブは数えるほどしかないから。そんなクラブで移籍金ゼロで取ろうなんてチームはないと思うからね。タダなら取るってレベルだったら、行く必要がない。お金を払って取るほどの選手まで成長してないってことだから」
膝の怪我さえなければ、もっと欧州で活躍できたかもしれない。多額の移籍金を残して欧州トップレベルのクラブに移籍、なんてこともあったのかもしれない。
内田が現役最後の試合を終えた日、ポルトガルで開催されたCL決勝の舞台では内田の元同僚たちが奮闘していた。バイエルンにはノイアーとゴレツカ、パリSGにはドラクスラー、ケーラー、シュポ・モティン。シャルケ時代には同じチームで同じような景色を見ていた仲間が、世界のトップに立つためにギリギリの戦いを繰り広げていた。
ひょっとしたら、あのステージに内田が立っていたかもしれない。日本人最高位となるCLベスト4と決勝の間には、小さくない差が存在する。でも、いつの日か必ず。
タラレバを言ってもしょうがないが、タラレバでワクワクさせてもらえるのは、それはそれで夢のある話ではないか。内田は、僕らに夢を見せてくれる選手だった。
「採点を0.5上げるより、次の試合」
自分の体を大事にするために、内田はある時から無理しすぎないことを大切にしていた。ある程度監督からの信頼を得て、試合にも継続して起用されるようになると、次の試合を考えることも大切だと口にするようになっていた。
「一生懸命やるのも、評価を上げるために頑張るのも大事だけど。キッカーの採点を0.5上げるより(笑)、次の試合のことを考えないと。どれだけ長く、大事なときにしっかり力を出せるか。
前は監督に信頼してほしいという思いがあった。でも今はある程度試合に出させてもらっているので、抑えられるときは抑える。怪我をしないように。昔、誰かに言われたんだよな。誰だっけな、オズワルド(・オリヴェイラ)だったかな。『お前は次の試合のこと考えてやっているのか?』って、1回だけ。若い時、20歳頃かな」