炎の一筆入魂BACK NUMBER
最下位カープに足りない「活気」。
いま試される3連覇メンバーの姿勢。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/08/18 11:40
田中広輔は打率.227、菊池涼介(写真)は.248。かつての1、2番コンビが下位打線に並ぶのは寂しい。
失策数もリーグワーストの2位。
開幕直後のつまずきが悪循環となっている面もある。防御率とともに失策数もリーグワースト2位。守備力に不安を残すことで、僅差の終盤にも打力のある選手への代走や守備固めの一手を切りづらい。広島の攻撃面の頭脳となっている高信二ヘッドコーチもいまだに、試合の中で守備重視の布陣へ舵を切るタイミングを計りかねているように感じる。
シーズン序盤、主力選手の1人は危機感を口にしていた。
「(3連覇していたときは)相手からすると嫌だったと思う。でも、今はカープはラッキーと思われているかもしれない」
主力の引退や退団、移籍、蓄積疲労など、3連覇からの反動はある程度覚悟しなければいけなかった。ただ、覚悟して戦うのと、受け入れてしまうのとでは全く違う。
防御率だけをスケープゴートにはせず、守備面や走塁面も見直さなければいけない。'16年以前の広島は投高打低。投手陣が野手陣を引っ張ってきたからこそ、3連覇がある。打撃だけでなく、守備や走塁でも、援護はできる。
「いかに個々が同じ方向を見られるか」
結果論からものを言うのは素人でも、細かなところまで突き詰めていくのがプロだろう。首脳陣が明確なビジョンを示し、選手たちはそれぞれの役割をまっとうする。戦う集団、勝つ集団は、決して仲良し集団でなくていい。勝利という同じ目標を目指す者同士だからこそ、ぶつかってもわかり合える。
それぞれの役割を果たすことで、チームはより大きな力を発揮する。3連覇したときはベテランの新井貴浩が走者を進める進塁打を打つ姿や、粘って四球で出塁する姿を見せていたから、打線全体につながりの意識が浸透していった。
自分のことだけでなく、チームのために戦うことができるか。
「いかに個々が同じ方向を見られるか」
開幕前にそう言っていたのは會澤翼であり、鈴木誠也だった。
送球難の選手の送球を受けた選手が安堵感を露呈するのではなく、カバーした上で鼓舞するくらいの気概が欲しい。自分の成績が落ちる結果でもチームにプラスとなればムードを明るくする言動が求められる。