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日本人選手を変えた厚底シューズ。
五輪前規制の衝撃と走者への影響。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2020/08/15 11:30
東京五輪女子マラソン代表の一山麻緒も、ナイキ製の厚底シューズで好記録を連発。トラック競技である5000mと10000mで会心の走りを見せた。
体に刻まれた感覚は消えない。
むろん、東京五輪も視野におさめつつ、厚底シューズを武器にしようと足を慣らし、トレーニングに励んできた選手も多いはずだ。衝撃は小さくない。そして、用具をめぐる規定の変更に振り回されるマイナスもまた、決して小さくない。
「日本の選手がトラックでも世界との距離をより縮めることができた」
そんな手ごたえを語る指導者もいた。言葉の前提としていた条件は、変わった。
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ただ、決してネガティブにばかり捉える必要はない。新たな規定は世界共通であり、日本の選手の使用率が高いと見られていたとはいえ、ルールは平等だ。
日本の選手たちが進んで厚底シューズを使用し、これまでにない記録を出したことは事実。それは感覚として、自身に残る。スピード感は体験として、体に刻まれる。想像ではなく、あるレベルのタイムを体感したのだ。
その感覚はきっと、目指すべき目標への意識をさらに高め、植え付けていくはずだ。
例えば競泳では、速く泳ぐ感覚を味わうためにあえてロープで引っ張ってもらい、自身の本来以上のスピードで泳ぐトレーニングがある。目標とするスピード、タイムを想像だけにとどめないためだ。
ホクレン・ディスタンスの好記録は、シューズが1つの大きな要因ではあったかもしれない。そして規制もかかる。
ただ、そうした好記録を刻んだ経験が消えることはない。
そう考えれば、規制がかかるとはいえ、今後へのプラスとなる。